スキル・キャリア部下を伸ばす上司 ダメにする上司

相づちしか打たない上司の“人望”がなぜ厚いのか

細川義洋 / ITコンサルタント

 課長やマネジャーなどの肩書がつくと、同じ役職の人と自分を比べることがあるでしょう。「あの人のグループはウチより売り上げが多い」「彼のグループはメンバー同士の仲が良くてチームワークも優れている。自分はまだまだ」──役職者としての目標や管理の仕方で思い悩んでいる人も少なくないでしょう。

多くの相談を受ける上司がしていたこと

 筆者は管理職のころ、部下から相談される回数と内容を気にしていました。昇格当時、隣席に同じ年の管理職がいたのですが、部下が相談に来る回数は、彼の方が圧倒的に多かったのです。

 そして、彼の部下たちは仕事の悩みはもちろん、親の介護問題や毎月のカードの支払いのことなど、個人的な悩みを打ち明けていました。筆者には、そんな相談をしてくれる部下はほとんどいませんでした。上司として何か欠けているのかと、ひそかに悩んでいました。

 では、隣の上司は部下にどんなアドバイスをしていたのでしょうか。それが気がかりで、ある飲み会で、彼が部下から相談を受けている様子を観察してみました。

 驚いたことに、彼は部下にアドバイスらしいことはほとんどしていませんでした。ただ、フンフンと部下の話に相づちを打ち、時々部下の言葉を復唱するだけです。

 「最近、残業が増えて……」「ふうん」「おかげで寝不足になっちゃって……」「寝不足かあ」「ちょっと体調も悪いんです」「体調が……」──万事、こうしたやり取りでした。

 もし、筆者がこうした相談を部下から受けたら、体のどこがどのように悪いのかを聞き出して残業を減らすためのアドバイスをしていたでしょう。しかし彼は、そんなことをしませんでした。彼には“頼りにならない上司”という印象を持ったのですが、部下は多くの相談を持ちかけるのです。正直、その気持ちがわかりませんでした。

上司は部下の悩みの全てを解決できない

 そこで、「部下が相談してくれる秘訣(ひけつ)」を彼に直接聞いてみました。彼は首をひねりながら、「余計なことを言わないのがかえって良いのではないか」と言います。

 もし自分が上司に相談に行き、話し終わる前に上から目線で「ああしろ、こうしろ」と言われたら、と考えたのだそうです。答えのない問題を相談して、上司の答えが見当はずれなら信頼されなくなる、と言うのです。

 部下の個人的な相談には、ガス抜きをするくらいの気持ちで良い。やれることは、正しく答えてくれそうな専門家を紹介することぐらいではないか、というのが彼のスタンスでした。

 これには合点がいきました。上司だからといって、部下の全ての悩みを解決できるわけではありません。筆者はそうしようと焦っていたのだと考え直しました。無理に答えて、かえって部下の気持ちを遠ざけることもあるのです。

部下の悩みを聞くだけでも価値はある

 最後まで相談に耳を傾け、悩みを受け止めたことを示せれば、部下は少しは楽になるでしょう。それで十分なのです。むしろ、それ以上のことをやれば、部下は上司を敬遠するかもしれません。

 その件以来、相談に来る部下には余計なことを言わず、ただ多くを語らせました。相づちと復唱です。すると、次第に相談が増えました。「ふうん」と聞いているだけでしたが、家庭の問題や恋愛相談まで受けるようになりました。部下も満足していたのでしょう。

 <「部下を伸ばす上司 ダメにする上司」は毎週火曜日掲載です。次回は12月27日です>

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細川義洋

細川義洋

ITコンサルタント

1964年、神奈川県生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。NECソフト(現NECソリューションイノベータ)、日本IBMでシステム開発やコンサルティングを行う。著書に「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」「IT専門調停委員が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則」(日本実業出版社)などがある。

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