ヒラリー・クリントン氏。米大統領選でトランプ氏に敗れた=2016年7月撮影
ヒラリー・クリントン氏。米大統領選でトランプ氏に敗れた=2016年7月撮影

社会・カルチャーメディア万華鏡

女性政治家のファッションは有権者に何を伝えるのか

山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員

 2016年は女性政治家が目立った年だった。

 国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めた英国では7月、キャメロン首相の後任にテリーザ・メイ氏(60)が就任した。

 政治手腕とともに注目されたのがファッションセンスだった。英大衆紙はメイ氏のヒョウ柄のハイヒールの写真を表紙にし、ファッションに関する記事を載せた。ツイッターでは「女性だとなぜファッションを注目されるのか」「女性差別では」という批判が起きた。

 が、外見からその女性政治家の今が見えてくるなと感じた年でもあった。

ヒラリー・クリントン氏=2016年6月7日、西田進一郎撮影
ヒラリー・クリントン氏=2016年6月7日、西田進一郎撮影

“激変”を感じさせたクリントン氏

 メディアや世論調査の予想に反し、米大統領選で負けたヒラリー・クリントン氏(69)。敗北から1週間後、ワシントンで開かれた慈善団体の集会に姿を見せた。目は落ちくぼみ化粧気はなく別人だった。激変に驚いた人は多いだろう。

 「この1週間、ただ丸まって本を読んだり、犬といたり、二度と家を離れたくないと思ったことが何度かあった」と語ったという。“最強の女性”でもあんなにも落ち込むことがあり、落ち込んだことを素直に話したことに初めて親近感を抱いた。「逃がした魚は大きかった」と有権者に思わせてほしかったが、その気概を放棄したかのような姿に少し失望も感じた。

 韓国では初の女性大統領の朴槿恵(パク・クネ)氏(64)が、親友の崔順実(チェ・スンシル)被告を国政に関与させたとして弾劾訴追に追い込まれた。

韓国の朴槿恵大統領=2015年6月22日、代表撮影
韓国の朴槿恵大統領=2015年6月22日、代表撮影

 実は朴氏はとても肌が美しく、しわ、シミが少ないとずっと関心を持っていた。韓国は美容大国、整形大国だが、大統領は美容に執心する暇などないだろうになぜ、と。

 ところが疑惑を巡る報道でいろいろやっていたことが分かった。例えば、毎日新聞の12月14日夕刊に載った共同通信の記事によると、朴氏が大統領就任前にアンチエイジング施術を受けていた医師キム・サンマン氏と、崔被告の美容整形の主治医キム・ヨンジェ氏らが国会聴聞会に呼ばれた。2人とも、大統領の治療を行う資格がない立場で大統領府へ呼ばれ、主に美容目的で使われる胎盤注射などを朴氏に行ったと認めたそうだ。韓国ではもっと過激な報道もある。

 若く美しく見せようとした努力は、表情を乏しいものにした。結果的に朴大統領は国民に訴える力を削がれてしまい、それが最悪のタイミングで表れてしまったのではないだろうか。

追い込まれ感を見せた小池氏

 そして、日本。12月21日、テレビに登場した小池百合子東京都知事(64)の髪を見て「あっ」と声が出そうになった。うっすらと白髪らしきものが見えたのだ。当選以降テレビジャックしていた小池氏を見てきたが、こんなの初めてだった。

小池百合子・東京都知事=2016年12月21日、代表撮影
小池百合子・東京都知事=2016年12月21日、代表撮影

 小池氏はファッション、ヘアスタイル、化粧にとても気を使っていると見受ける。AERA11月14日号では、「スーツ(洋服)はどこのブランド?」の問いに「自分でデザインする」、「愛用の化粧品のブランドは?」の問いには「LANCOMのマスカラ」と答えている。

 12月21日と言えば、2020年東京五輪・パラリンピックの開催経費について大会組織委員会が約1兆6000億~1兆8000億円とする予算案を提示したものの、費用分担をめぐる調整が困難なことが露呈した。

 数日前には、小池氏が提起した五輪会場見直し問題は全て現行計画通りの場所で決着することになり、「壁に当たった小池劇場」(毎日新聞12月18日朝刊社説)などとメディアはこぞって指摘した。

 髪の毛を染めるのには時間がかかる。体力、気力がいると思う。小池氏は髪の毛が多いからなおさらだろう。白髪らしきものが見えたことが、年の瀬になって小池氏が追い込まれた状況を物語っているような気がした。

 どんなファッションをしようが、ヘアスタイルにしようが、アンチエイジングをしようが個人の自由だと思うが、今年も観察は続けよう。

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山田道子

山田道子

毎日新聞紙面審査委員

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞入社。浦和支局(現さいたま支局)を経て社会部、政治部、川崎支局長など。2008年に総合週刊誌では日本で一番歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長を経て15年5月から現職。

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