くらしマンション・住宅最前線

30年超え分譲マンションが直面する三つの選択肢とは

櫻井幸雄 / 住宅ジャーナリスト

 マンション管理組合の総会で管理会社が説明を行う。終わると、参加者から大きな拍手が起きた。そんな光景、めったに見られるものではない。説明を行ったのは伊藤忠グループのマンション管理会社・伊藤忠アーバンコミュニティ。同社は2015年、「100年マンション研究会」を発足させ、築年数を重ねたマンションの今後を考える取り組みを始めた。

 分譲マンションは分譲時に長期の修繕計画が立てられる。が、その計画が見据える先は30年程度というケースが多い。30年程度先まではメンテナンスを行い、住み続けられるようにしましょう……で、その先が見えにくい。

 一方で、日本では築30年を超えようとしているマンションが増えている。この先、どうなるんだろうか、と漠然とした不安を抱えながら、「でも、どうしたらよいか分からない」という居住者が増えている。そこで「100年マンション研究会」に取り組む伊藤忠アーバンコミュニティは、参加管理組合を募り、説明を行う。

 これからの道筋は三つである、と。延命か、建て替えか、精算か。土地を売却し、利益を分配するのが精算だが、あくまでもそれは最後の手段。「延命」が現実的な解決法と考えられるが、その道を選ぶにも管理組合の決意が必要だ。といっても、管理組合に問題を丸投げするわけではない。長年マンションの管理を手がけ、建物のことをよく知っている伊藤忠アーバンコミュニティが、一緒になって結論を探しましょうと説明。その「覚悟」を実感したマンション所有者の間で予期せぬ拍手が起きたのである。

「100年マンション研究会」に47管理組合が賛同

 この「100年マンション研究会」に賛同する管理組合は、1年半で47に増えた。マンションの管理会社にとって、一番大切なことは「合意形成」だと伊藤忠アーバンコミュニティは考えている。日々の小さな不満から、建て替えか延命か精算かといった大きな問題まで、「合意形成」が解決の糸口となる。

 その「合意形成」に積極的に関わってゆくことは、管理会社にとって大きな負担になる。が、その負担をいとわない、という「覚悟」を同社は持っているわけだ。ちなみに、関西圏では、子会社のIUCコミュニティライフも一緒になって100年マンションの取り組みを始めている。

 その姿勢がマンション居住者に評価されるのだろう、不動産マーケティングのスタイルアクト社が実施する「管理会社満足度ランキング」2016年において、伊藤忠アーバンコミュニティは管理戸数10万戸未満の部門で3年連続の1位、総合でも4位の評価を得ている。

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櫻井幸雄

櫻井幸雄

住宅ジャーナリスト

1954年生まれ。年間200物件以上の物件取材を行い、首都圏だけでなく全国の住宅事情に精通する。現場取材に裏打ちされた正確な市況分析、わかりやすい解説、文章のおもしろさで定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞、日刊ゲンダイで連載コラムを持ち、週刊ダイヤモンドでも定期的に住宅記事を執筆。テレビ出演も多い。近著は「不動産の法則」(ダイヤモンド社)。

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