
地域経済の厳しい実情のなかで、地域金融機関の貸し出し競争が激しさを増している。多くは、金利引き下げ競争であり、結局、利ざやの悪化を互いに助長している。「不毛な戦い」という声も出始めているが、今のところ、収束の気配は乏しい。
激戦エリアとなっているのは地方の大都市圏だ。県境を越えて営業を強化している周辺地域の金融機関が、地元金融機関の顧客を奪取すべく低利ローン攻勢を続けている。日本海側の大都市である、ある県庁所在市がその典型だ。周辺県の地銀、信金などが、住宅ローン、アパート・マンションローン分野で雪崩を打って低レート競争を続けている。
そのあおりを食っているのが地元金融機関である。本来、過剰なレート競争がなかったエリアだった。にもかかわらず、突然、レート競争が激しくなり、その渦に巻き込まれるようになった。その結果、地元の信金などは今年度、利ざやの悪化速度が増して、有価証券運用の苦戦も重なって「総資金利ざや」がマイナス水準にまで悪化してしまった。
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浪川攻
金融ジャーナリスト
1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。