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「日本型転勤昇進システム」が招く金融サービスの質低下

浪川攻・金融ジャーナリスト

 金融庁は金融業界に「顧客本位の業務運営」を求めている。これは、顧客のためになるサービスの徹底に心がけようということだ。ところが、金融業界の現場では、そのスタイルの定着が進まないでいる。へたをすると、掛け声倒れに終わりかねない。

 顧客本位の業務運営が進まない背景には、銀行や証券会社の仕組みがそれにふさわしいものに変わっていないという面を無視することはできない。

 ひとつは人事制度である。社員たちの出世の道筋である「キャリアパス」だ。銀行や証券会社の場合、支店を転々と経験して、実績を上げて肩書が上がっていく方式である。その先にあるのは支店長という夢のポストだが、それまで社員は、2、3年のサイクルで異動・転勤を繰り返す。支店長も2年程度で異動となるのが通常のパターンである。

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金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。