「変なホテル」フロントの恐竜ロボット
「変なホテル」フロントの恐竜ロボット

IT・テクノロジーロボットと人間とミライ

ロボット214体と従業員7人が運営する「変なホテル」

石川温 / ジャーナリスト

 リゾート施設、ハウステンボス(長崎県佐世保市)にある、日本初のロボットホテル「変なホテル」。2015年7月に開業し1年半が経過している。先日、1泊する機会を得たのだが、単なる「ロボットエンターテインメントホテル」と思いきや、徹底的にコストを削減した宿泊施設だということに驚かされた。

芝刈りロボット
芝刈りロボット

 「変なホテル」に入ると、出迎えてくれるのが、3体のロボットだ。恐竜が2体と女性の形をしたロボットがチェックイン業務を行ってくれる。恐竜にもかかわらず、日本語、英語、中国語、韓国語で流暢(りゅうちょう)にあいさつをしてくれる。宿泊客は、自分が使う言語をタッチパネルで選ぶ。すると、次からはその言語で話してくれるようになる。

 日本語の場合、名前は音声入力で対応する。筆者は「イシカワツツム」というちょっと珍しい名前なのだが、しっかりと「ツツム」の部分も聞き取ってくれた。予約者があらかじめ登録されているため、聞き取った名前とリストを照合しているのだろう。あとはサインをすればカードキーが発行される。

 外国人の場合は、パスポートをスキャナーで読み取らせればOKとなる。日本語の場合は30~40秒、パスポートを持つ外国人なら20秒程度でチェックインが完了する。

荷物を預かるのも部屋まで運ぶのもロボット

 フロントには、荷物を預かるロボットも存在する。チェックイン時間前やチェックアウト後に荷物を預ける際にもロボットが対応する。15キロまでの荷物に対応するが(スペック的には30キロまで可能)、それ以上の大きな荷物はスタッフが対応するという。

 自分の部屋までポーターロボットが荷物を運んでくれる。ロボットに装着されたタッチパネルに部屋番号を打ち込む。すると、床に埋め込まれたチップの情報をもとに、部屋まで自動的に運んでくれる。

荷物を運ぶポーターロボット
荷物を運ぶポーターロボット

 宿泊客の歩くスピードに合わせて動く。ポーターロボットの前を横切ったり、足をぶつけてしまったりすると自動的に止まるようになっている。フロントから一度、外に出る必要のある別棟の部屋は、雨にぬれてしまう可能性があるため、残念ながら届けてくれない。

 部屋には、おしゃべりしてくれるロボットがいるし、窓もロボットが清掃している。庭の芝生も、芝刈りロボットが毎日勝手に走って奇麗な状態を維持している。お掃除ロボット「ルンバ」と似たようなものだが、屋外は壁がないため、地面に弱い電気を流すことで行動範囲を理解し、外に出ないようになっているという。

出勤している従業員は5人

 では、実際、どれくらいロボットによってコスト削減が図られているのか。

 変なホテルは144室で、エキストラベッドを入れると最大488人が宿泊できる。通常、これくらいのホテルの場合、従業員30~35人で運営するのが一般的だとされる。ところが、変なホテルは「従業員は7人。毎日、交代で休んでいるため、出勤しているのは5人です。3月にはもう1人減らして6人体制になります」(総支配人)という。

客室内の様子
客室内の様子

 部屋の清掃やベットメークは業者に外注している。朝食を食べるレストランは、ハウステンボス側の経営となっている。「レストランでは、ルームチャージができず、すべてその場で支払ってもらうようにしています。そうすることで、チェックアウト時の精算作業がいらなくなります」(総支配人)

 宿泊代金はすべて予約時に払う仕組みだ。平日なら1人1泊1万円台、週末となれば2万円台となっている。ルームサービスもなく、ジュースや酒はすべて自販機で購入する。チェックアウト時の精算業務をなくし、経理担当の人間を置かない。「これだけで、スタッフの人数を減らすことができます」(総支配人)という。

窓拭きロボットを購入する客も

 オープン時は6種類82体だったロボットは25種類214体まで増えた。ロビーなどには購入できるロボットも展示されており、「実際、購入していく宿泊客も多い。特に窓拭きロボットが人気」(総支配人)という。ちなみに窓拭きロボットのお値段は5万4800円だが、変なホテル経由での購入は割引が受けられる。

窓ふきロボット
窓ふきロボット

 現在はロボットも安定して動き、快適に宿泊できるが、オープン当初はロボットのチューニングには苦労した。「部屋の音声認識ロボットは、音声入力の試験を入念に行いました。でも、ホテルがオープンすると、宿泊客からクレームの嵐となりました」と振り返る。

 ロボットが子供の声に反応しなかったのだ。「宿泊客から、自分の声には反応しなくてもいいから、子供の声には反応するようにしてくれと言われました」。現在では、子供にもしっかり対応し、会話できるようになったという。

 今年中には、ロボットがカクテルをつくる「ロボットバー」や、一緒にカラオケができる「ロボットカラオケ」も設置する予定だ。

 「変なホテル」とは、実は「変わり続けるホテル」という意味合いがあるという。変化し続けることで、さらに楽しく、コスト削減につながる発展を遂げていくようだ。

 ※「変なホテル」 3月、千葉県浦安市に2軒目が開業した。7月に愛知、その後は大阪と台湾に進出し、将来的には国内外で100店舗を展開する計画だ。

 <「ロボットと人間とミライ」は随時掲載します>

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石川温

石川温

ジャーナリスト

1975年、埼玉県生まれ。中央大学商学部を経て、98年、日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。日経トレンディ編集部で、ヒット商品、クルマ、ホテルなどの取材を行ったのち、独立。キャリア、メーカー、コンテンツプロバイダーだけでなく、アップル、グーグル、マイクロソフトなどの海外取材、執筆活動を行う。テレビやラジオなどでのコメント出演も多い。メルマガ「スマホ業界新聞」を配信中。

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