IT・テクノロジー知ってトクするモバイルライフ

ソフバン回線使える格安SIM登場 でも通話なし

石野純也 / ケータイジャーナリスト

 「格安スマホ」や「格安SIM」と呼ばれるMVNOのサービスは、ドコモからネットワークを借りる会社が大半だった。ネットワークの開放義務がいち早く課され、貸し出しの際にMVNO側がドコモに支払う「接続料」も、3社の中でもっとも安かったのがその理由だ。

 ただ最近では、マイネオやUQモバイルなど、auのネットワークを使うMVNOも、徐々に増えている。

 こうした中、ソフトバンクのネットワークを借りるMVNOがついに登場した。日本通信が、ソフトバンクのネットワークを借りることに合意したためだ。

端末はそのままで料金を下げられる

 日本通信自身が「開幕SIM」と名付けたSIMカードの販売を始めたほか、日本通信が技術面を支援するUネクスト社も、「UモバイルS」という名称で、ソフトバンクから借りたネットワークを提供する。SIMカードはソフトバンクのSIMロックを外せないiPhone(6以前)、iPadなどで使え、もちろんSIMロックがかかっていないSIMフリー端末でも利用できる。

日本通信とソフトバンクは1月にネットワークの貸し出しに合意
日本通信とソフトバンクは1月にネットワークの貸し出しに合意

 利用者にとってのメリットは、端末をそのままで料金を下げられるところにある。特にソフトバンクの利用者にとっては、同社が販売してきたiPhone、iPadを使えることもあって、恩恵が大きい。

 たとえば、日本通信自身が提供している開幕SIMでは、1ギガバイト(GB)の料金プランが880円。3GBが1580円、7GBが2980円、30GBが4980円という設定になっている。音声通話がない料金のため、厳密な比較はできないが、ソフトバンクの場合、iPadで1GBのプランを使おうとすると、最低でも4900円かかる。MVNOに変えるだけで、約5分の1に料金を下げることができるというわけだ。

 大容量プランでも料金は安く、30GBの場合、ソフトバンクが1万円なのに対し、日本通信やUネクストが4980円ですむ。このケースでは差が縮まるものの、それでも料金は2分の1程度になる。

データ通信のみで音声通話はない

 料金を下げたいソフトバンクの利用者にとっては渡りに船かもしれないが、注意したい点もある。

 一つ目は、まだ音声通話が提供されていないことだ。音声通話がないため、電話として使うためには、IP電話アプリなどをiPhoneにインストールしなければならない。ソフトバンクから番号ポータビリティーで移ろうと思っても、移ることができないのもネックになりそうだ。

 現状では、新規契約としてSIMカードを発行する以外の方法がない。元々音声通話に対応していないiPadで使うにはいいかもしれないが、電話として使っているiPhoneには向いているとはいいがたい。

「開幕SIM」の料金プラン。ソフトバンクを使うより安く設定
「開幕SIM」の料金プラン。ソフトバンクを使うより安く設定

 二つ目は通信速度にも違いが出てくる点。今はサービス開始直後のため、極端に速度が低下することはないが、問題は利用者が増えたときだ。ドコモのネットワークを使うMVNOでも、借りているネットワークの量と利用者のバランスが取れず、混雑しがちなお昼休みの時間帯にネットの読み込みが遅くなることがある。

 遅いだけなら我慢できるかもしれないが、時間切れになってしまい、サイトが表示されないケースもある。今後の動向次第だが、ソフトバンクと品質が完全に同じというわけでないことは、念頭に置いておきたい。

テザリングは非対応

 三つ目は、iPhoneやiPadをWi-Fiルーター代わりに使い、他の機器をネットにつなぐ「テザリング」にも、仕様上非対応になっている。大容量プランを契約して、他の機器をネットにつなごうと考えている人は、注意した方がいいだろう。音声通話だけでなく、SMSにも非対応なため、アプリによっては利用者登録ができないこともある。

 始まったばかりということもあり、まだサービス内容も限定的なため、普通に電話として使いたい利用者は少々手が出しづらい。今後、サービスが充実するのを待つのも手と言えるだろう。ソフトバンク自身が提供するサブブランド・ワイモバイルを利用する選択肢もあるため、総合的にメリット、デメリットを検討してみるべきだ。

 <「知ってトクするモバイルライフ」は、毎週火曜日に掲載します>

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石野純也

石野純也

ケータイジャーナリスト

1978年、静岡県生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。2001年、宝島社に入社。当時急速に利用者数を伸ばしていた携帯電話関連のムック編集に携わる。05年には独立してフリーランスのジャーナリスト/ライターに転身。通信事業者、携帯電話メーカー、コンテンツプロバイダーなどを取材、幅広い媒体に原稿を執筆する。業界動向を記したビジネス書から、端末の解説書まで著書も多い。

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