
就任3年目のある企業の社長と話をしていると、「就任以来業績が伸びてきたんだ」というので、「それじゃ報酬もあがったんでしょう?」と聞きました。すると、「いや、親会社があるし自分じゃアップを提案できないよ。総務の方でそれこそ“忖度(そんたく)”して提案してくれれば別だが……」と苦笑します。
出てきました。最近話題の言葉「忖度」です。辞書(大辞林)には「他人の気持ちをおしはかること。推察」とあります。この社長の場合、総務課あたりが「業績が伸びたから、社長はきっと報酬を上げてほしいと思っているだろう」と気持ちをおしはかることが「忖度」です。
ずいぶん前に、ロックグループRCサクセションの忌野清志郎が歌った反原発ソングがCD化されるとき、所属のレコード会社の親会社が原発を造っている東芝だったので、実現しなかったことがありました。
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川井龍介
ジャーナリスト
1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。