
時は7月終わりの夏休み、舞台は長野県上田市の旧家・陣内(じんのうち)家。16代当主であるおばあちゃんの90歳の誕生日を祝うため集まった大家族が、力を合わせて世界滅亡の危機と戦う物語が「サマーウォーズ」(岩井恭平著、細田守原作、角川文庫)だ。奇想天外で疾走感にあふれている。2009年夏に公開されたアニメ映画「サマーウォーズ」を忠実に小説化した。
なぜ青春小説かというと、主人公の高校2年生、健二の成長が描かれるからだ。東京都心の高校に通う健二は、あと一歩で数学オリンピックの日本代表になれるほどの才能があるが、人付き合いが苦手で自分に自信を持てないタイプ。美人かつ活発で、校内のアイドル的存在の3年生、夏希にあこがれているものの、高根の花だ。ところが夏休みに入って突然、夏希に頼まれて陣内家への帰省に同行することになる。
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鶴谷真
毎日新聞学芸部記者
1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。