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対北朝鮮ミサイル防衛 米国内では有効性に疑問の声

会川 晴之・毎日新聞北米総局特派員
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       大陸間弾道ミサイル(ICBM)高出力エンジンの燃焼実験を視察する金正恩第1書記(当時)朝鮮中央通信が2016年4月9日報じた(朝鮮中央通信・朝鮮通信)
       大陸間弾道ミサイル(ICBM)高出力エンジンの燃焼実験を視察する金正恩第1書記(当時)朝鮮中央通信が2016年4月9日報じた(朝鮮中央通信・朝鮮通信)

 核兵器や弾道ミサイル開発を加速する北朝鮮の動きを受けて、米国で、ミサイル防衛(MD)能力強化を求める声が高まっている。5月末には、北朝鮮からの大陸間弾道ミサイル(ICBM)を想定した初めての迎撃実験を実施した。トランプ政権はさらにMD強化を図る方針だが、米国でもMDの有効性に疑問を投げかける声も漏れ始めている。

 「ICBM発射実験の準備が最終段階に入った」。今年1月1日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、米本土を射程内に収めるICBMの完成が間近に迫っていると宣言した。その数日後、米国防総省で開かれた記者会見。「米国はICBM攻撃に対処できるのか?」「米本土を守るMDの実験は2014年6月以後、実施されていない。本当に大丈夫なのか?」。そんな質問が記者から相次いだ。

 北朝鮮の核・ミサイル開発問題は、米国人にとって核兵器を取得したインドやパキスタンと同様、長い間「対岸の火事」だった。脅威にさらされるのは、日本や韓国など周辺国のみ。もちろん、両国には数万人の米軍やその家族が駐留するため、軍関係者にとっては重大事項だが多くの米国市民には関係がなかった。「核ミサイルが米本土に届くはずがない」からだ。だが、金朝鮮労働党委員長の「新年の辞」は、米国民にぐさりと刺さる。「…

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会川 晴之

毎日新聞北米総局特派員

1959年東京都生まれ、北海道大学法学部卒、87年毎日新聞入社。東京本社経済部、政治部、ウィーン支局、欧州総局長(ロンドン)、北米総局長(ワシントン)などを経て、2018年12月から現職。日米政府が進めたモンゴルへの核廃棄計画の特報で、11年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。日本発の核拡散を描いた毎日新聞連載の「核回廊を歩く 日本編」で、16年の科学ジャーナリスト賞を受賞。著書に「核に魅入られた国家 知られざる拡散の実態」(毎日新聞出版)。