朝日を浴びる平和祈念像=長崎市
朝日を浴びる平和祈念像=長崎市

社会・カルチャー青春小説の系譜

8月9日の長崎を描いた芥川賞作品「祭りの場」

鶴谷真 / 毎日新聞学芸部記者

 14歳の少女が見た長崎原爆を描く小説が、林京子さんの「祭りの場」だ。林さんの実体験をつづったものである。被爆から30年を経た1975年のデビュー作であり、芥川賞を受賞した。

 主人公の「私」は、林さんの分身である。45年の夏、N高女(林さんは長崎県立長崎高等女学校の出身だ)に通う「私」は、学徒動員されて兵器工場で働いている。従業員の男たちの劣情に満ちた目と手にさらされる。

 <工場の風紀は乱れに乱れていた。皇国は遠い存在だった>。

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鶴谷真

鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。