青春小説の系譜

“田舎女子”のグロい生態を描く「ここは退屈迎えに来て」

鶴谷真・毎日新聞学芸部記者
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 驚いた。地方都市--本書の登場人物たちの言い方だと「田舎」--に住む若い女性たちの内面と行動をかくもリアルに読ませてくれるとは……。山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」(幻冬舎文庫)は、8編から成る連作短編集。冷徹で突き放した筆致でもって、女子たちのグロテスクな生態を手づかみにしてみせる。

 本書の主な舞台となる「田舎」はどこかの県庁所在地だ。駅前は<東京でいうなら祖師ケ谷大蔵くらいの人通り>。小田急電鉄の祖師ケ谷大蔵駅は東京都世田谷区にあり、住宅や商店街、大学などに囲まれている。

 冒頭の章は、東京で10年過ごしてから実家に戻り、ライターの仕事を始めて2カ月になる「私」の話。30歳だ。東日本大震災後の心細さが帰郷のきっかけのひとつとあるから、時は2011年だろう。高校3年時に親友だった女性と再会後、やはりクラスメートだった椎名一樹が教官として働いている自動車学校へ行き、ペーパードライバーのための実習を受ける。だが、あの格好良くて女子にもてまくった椎名は<田舎のおっちゃん特有…

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鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。