社会・カルチャー戦国武将の危機管理

「孫子の兵法」で味方の犠牲者を減らした軍師・官兵衛

小和田哲男 / 静岡大学名誉教授

 戦国時代の大きな戦いだと、一度の戦いで両軍合わせて数千の死者が出るということもあった。戦いにあたって、いかに味方の犠牲者の数を少なくするかも大事な危機管理であった。この点で注目されるのが、豊臣秀吉の軍師として知られる黒田官兵衛である。

 官兵衛はいかにも軍師らしく、中国伝来の兵法書に通じており、いくつかの戦いでその兵法を応用し、味方の犠牲をほとんど出さない戦い方を実践していた。その兵法というのが「囲師必闕(いしひっけつ)」である。有名な「孫子」の「軍争第七」に出てくる言葉で、「囲む師(かこむし)は必ず闕(か)く」と読む。かいつまんでいうと、「敵と戦うとき、全部ふさいでしまうのではなく、一方だけ逃げ口を開けておくことが必要である」という意味である。

 ふさぐということなので、野戦よりも籠城戦、すなわち攻城の場合を想定したものと思われるが、全部囲んで…

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小和田哲男

小和田哲男

静岡大学名誉教授

戦国大名・今川氏のお膝元で、徳川家康の隠居先でもあった静岡市で1944年に生まれる。72年、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。専門は日本中世史。戦国時代史研究の第一人者として知られ、歴史番組でおなじみの顔。趣味は「城めぐり」で、公益財団法人「日本城郭協会」の理事長も務める。主な著書に「戦国の群像」(2009年、学研新書)、「黒田官兵衛 智謀の戦国軍師」(13年、平凡社新書)。公式サイト https://office-owada.com