ユニバーサルエンターテインメントのオーナー創業者で、会長として実権を握っていた岡田和生氏(右手前)=2017年9月14日撮影
ユニバーサルエンターテインメントのオーナー創業者で、会長として実権を握っていた岡田和生氏(右手前)=2017年9月14日撮影

政治・経済パチスロ最大手「大騒動」

「全員、罷免だ」パチスロ創業者会長が取締役会で叫んだ

編集部

創業者会長「追放劇」の裏側(2)

 パチスロ機メーカー、ユニバーサルエンターテインメント(ジャスダック上場)が5月23日に開いた臨時取締役会で、会長だった岡田和生氏(74)は、同社の株式10%を新たに引き受ける権利「ストックオプション」(新株予約権)=注=を、自分に与えるよう提案した。複数の同社幹部の証言と、経済プレミア編集部が入手した臨時取締役会の詳細な記録に基づき、「追放劇の裏側」の2回目をお届けする。

「ストックオプション」を言い出した岡田氏の狙い

 午後2時から始まった臨時取締役会は、冒頭から岡田氏の“独演会”が続いていた。岡田氏は、香港に設立した同族企業の実権を長男らに奪われた経過を長々と説明し、「どう対抗するかが今日の話だ」と周囲を見渡した。「極めて乱暴だが、乱暴でないと解決しない。私が筆頭株主になる」と述べ、ストックオプションの制度を利用して、ユニバーサル社の株式10%分を取得する権利を、自分に与えるよう要求した。

 10%分は、株数で約800万株にあたる。その株式を新たに取得すると、岡田氏はなぜ“筆頭株主”になるのか。長男らが実権を握った同族企業は、ユニバーサル社の株式の67%、5445万株を保有していて、10%ではその7分の1にしかならないはずなのになぜなのか。そのカラクリを説明する。

 長男らの“クーデター”で、岡田氏は同族企業の代表を解任された。だが、岡田氏が同族企業の最大の出資者であることに変わりはない。同族企業には、岡田氏が46%、長男と長女が合わせて53%を出資している。同族企業が保有するユニバーサル株式5445万株をこの出資比率で割り振ると岡田氏が2504万株、長男、長女が2885万株になる。

 ここで岡田氏にストックオプションが与えられ、ユニバーサル株の10%を取得すると、2504万株に800万株が加わり、約3300万株になる。長男、長女の合計を上回り、「実質的な筆頭株主」に返り咲くというわけだ。すぐに長男の“クーデター”をひっくり返せるわけではないが、プレッシャーにはなると考えたうえでの提案だったとみられる。

ユニバーサルエンターテインメント本社が入居するビル(中央奥)=東京都江東区有明
ユニバーサルエンターテインメント本社が入居するビル(中央奥)=東京都江東区有明

社外取締役が「反対」の口火

 岡田氏には極めて都合の良い「ストックオプション提案」だった。だが、逆に言えば、岡田氏以外の株主全員が不利になる提案でもある。株主全員が納得するような理由がなければ、おいそれと取締役会で決議できない。

 しかも、ストックオプションを決めるには、株式を取得する際の価格や時期といった条件が必要になる。岡田氏はそれを示さず、「ストックオプションをもらわなければ私は罷免される。会社は崩壊する。今日の役員会で決める」と言い張った。

 同族企業の実権を長男らに握られたまま放置すると、自分がユニバーサル社の会長を追われかねない。岡田氏は危機感をあらわにしていた。だが、価格や時期を示さずにストックオプションを決議することは、会社法の規定からしても無理がある。

 さっそく、ユニバーサル社の社外取締役から疑問の声が上がった。同社は取締役7人のうち2人が社外取締役だ。1人は元横浜地検検事正、もう1人は元東京高裁判事。「この場で決めるなら、ストックオプションの中身も決めなければダメ」。「付与する合理的な目的がなければダメ」。法律に基づく当然の指摘だった。取締役の1人も「ストックオプションの議案として取り上げるだけの材料はない」と反対した。

 一方、岡田氏の側近と目されていた取締役1人が賛同の声を上げた。「ここではストックオプション付与の方針を決めればいい。詳細な資料はこれから作り、来週の取締役会にかけたらどうか」。岡田氏の提案を補うような発言だった。

ユニバーサルエンターテインメントのパチスロ機
ユニバーサルエンターテインメントのパチスロ機

「5対1」で岡田氏提案を否決

 午後2時に始まった臨時取締役会は、このとき開始から2時間を過ぎていた。岡田氏はしびれを切らし、「会社を安定させるためには、この手段しかない。それを取り上げるのは何が間違いなの? 信頼関係を作れなければ、次の株主総会で役員の全員罷免もある」と承認を迫った。

 提案は議案として決議されることになった。岡田氏は特別利害関係人に当たるため決議から除外。残る6人の取締役のうち、賛成したのは岡田氏側近の取締役1人だけ。富士本淳社長ら残る5人は反対に挙手をした。取締役のうちの1人は岡田氏の妻だが、同じように反対に手を挙げた。

 「反対」に5人の手が挙がったのを見て、岡田氏は叫んだ。「次の株主総会で全員やめさせる。信頼関係が守れないなら、全員罷免だ」

 この日の臨時取締役会は、これで終わらなかった。この後、岡田氏は会長としてのすべての業務執行権限をはく奪される。その一部始終は次回、報告する。

注;ストックオプション(新株予約権)

 会社が取締役や従業員に対して、会社の株式を、あらかじめ定めた価格で取得できる権利を付与する制度。取締役や従業員は将来、株価が上昇した時点で権利を行使して株式を取得し、売却することにより、株価上昇分の報酬が得られる。取締役や従業員に、業績を向上させる意欲を高めてもらう狙いがある。

 <次回「パチスロ創業者が「賛成4、棄権1」で“追放”された日」>

久保利氏を招き2月28日に対談イベント「企業不正と第三者報告書」

 日産の無資格検査、神戸製鋼の品質検査データ改ざんに始まり、スバル、三菱マテリアル、東レと大企業グループで不正発覚が相次いでいます。経済プレミアでは掲載記事に加筆して、書籍「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」(毎日新聞出版、税込み1080円)を出版します。筆者は今沢真・経済プレミア編集長兼論説委員です。

 出版を記念し、企業不正に詳しい久保利英明弁護士をゲストにお招きし、今沢編集長とのトークイベント「企業不正と第三者報告書 ~日産、神鋼の不祥事に何を学ぶか~」を開きます。2月28日(水)午後6時半から8時、場所は東京メトロ・竹橋駅の上にある毎日新聞東京本社地下1階「毎日ホール」です。入場は無料。事前申し込みが必要で、先着120人です。

 毎日メディアカフェのサイトで応募を受け付けています。(2018年2月19日追記)

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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