東芝メモリ四日市工場=2017年4月3日、松本宜良撮影
東芝メモリ四日市工場=2017年4月3日、松本宜良撮影

政治・経済東芝問題リポート

東芝「半導体売却後の自己資本3300億円」は“健全”か

編集部

 東芝は20日、迷走を続けてきた半導体子会社「東芝メモリ」の売却について、米投資ファンドや産業革新機構で構成される日米韓連合への売却を取締役会で決議した。米原発事業で巨額損失が発生したことを受けて1月に半導体事業の売却手続きに入って以来、8カ月という長丁場の売却交渉が、ようやく決着に向かう。

 東芝はこの日記者会見をせず、「東芝メモリ株式会社の株式譲渡に関するお知らせ」と題した4枚のニュースリリースを公表した。そこには、売却は来年3月末までに完了する予定であり、売却により、自己資本が約7400億円改善して債務超過を解消できる見通しであると書かれていた。まず、この財務的な意味を解説しよう。

税金などを引き、7400億円財務改善へ

 東芝によると、日米韓連合との間で、売却額は2兆円で合意した。これが丸々財務改善に貢献するわけではない。もともとの資産計上額約8000億円が引かれ、さらに弁護士費用やアドバイザーへの手数料といった売却に伴う経費も引かれる。その結果、売却益は1兆800億円になるという。

東芝本社が入るビル=東京都港区で2017年8月24日撮影
東芝本社が入るビル=東京都港区で2017年8月24日撮影

 また、売却に対して税金が約3400億円発生する。それを国に支払った残り7400億円が自己資本に算入され、財務が改善されるというのだ。

 東芝は8月に公表した業績予想で、来年3月末時点の債務超過額を4100億円と見込んでいる。7400億円でこれが解消される。単純計算すると、約3300億円が、次年度スタート時の自己資本となる見込みだ。

 東芝は今後、日米韓連合と詳細を詰めて売却契約を結び、各国の独占禁止法の審査を受ける。これが来年3月末までに間に合うかどうかは予断を許さないが、少なくとも計算上は、2年連続の債務超過の危機から抜け出すことができる見通しだ。

自己資本3300億円は“危機脱出”とは言えず

 それでは、自己資本が約3300億円で東芝の財務体質は健全になると言えるのか。東芝の売上高は4兆円程度だが、それだけの企業規模で自己資本がこの水準では、経営危機を脱したとは決して言えない。

 数千億円の損失が発覚した今回のような事態はめったに起きないだろうが、リーマン・ショックのような世界的な危機が襲来して1000億~2000億円の赤字になる可能性もないとは言えない。赤字が3300億円を超えると、再び債務超過転落となってしまう。

東芝の綱川智社長=2017年8月10日、竹内紀臣撮影
東芝の綱川智社長=2017年8月10日、竹内紀臣撮影

 一方、東芝は「東芝メモリ」を100%切り離すのではなく、売却後3505億円を再出資し、「持ち分法適用会社」にするという。「持ち分法適用会社」にすると、東芝の連結決算に、東芝メモリの利益を出資分だけ算入することができる。東芝の再出資の比率は正式発表ではないが、41%と言われている。

 さらに、東芝メモリは3年後の上場を目指すと言われている。これが期待通り実現すれば、上場を機に、株式を保有する東芝本体の財務が改善される可能性がある。ただし、果たして東芝の想定通りになるかどうか。いずれにしても財務体質は当面、綱渡り状態が続くことになりそうだ。

 <次回「日米韓連合への売却決着「東芝メモリ」の見えない将来」>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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