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人手不足で工場自動化進み「産業用ロボット」大需要

エコノミスト編集部

 人手不足対策、生産性向上への決めの一手が工場の自動化。需要が急速に伸び、関連メーカーは増産ラッシュだ。株式市場の一大テーマにもなっている。週刊エコノミスト10月10日号の巻頭特集「驚異の工場自動化」よりダイジェストでお届けする。

自動車・電機工場向けだけではないロボット

 これまでは自動車・電機産業が中心だった工場自動化の裾野が、他産業に急速に広がっている。代表的なのは、食品・医薬品・化粧品の「三品(さんぴん)産業」だ。

 味の素の子会社で包装機能を担う「味の素パッケージング」は8月、既存工場の老朽化に伴い、川崎市に48億円をかけて新工場を稼働した。包装工程ではロボットを、集荷には無人搬送車を導入するなど自動化技術を取り入れ、1人当たりの生産性を1.7倍に高めることを目指す。

 「三品産業」だけではない。キヤノンが2019年8月の操業を目指すデジタルカメラの製造工場(宮崎県高鍋町)は「精密機器の組み立て工程自動化は困難」という定説を覆した。

 昨年ドイツで、スポーツ用品大手「アディダス」が本格稼働した「スピードファクトリー」は世界中の製造業の話題をさらった。自動化技術によって少量多品種の靴製造が可能となり、人件費が高いドイツでも、価格競争力を持つ製品を供給することが可能になったからだ。

 人手不足に悩む日本、人件費高騰にあえぐ中国、インダストリー4.0を推し進める欧州。地域で事情が異なるものの、世界で同時に工場自動化への需要が高まっている。

関連企業は「うれしい悲鳴」が続く

 製造業の自動化需要に応えるかたちで、FA(ファクトリーオートメーション=工場自動化)、産業ロボット関連企業が、設備増強やM&A(企業の合併・買収)に動いている。「今、『供給体制は十分』というFAメーカーなど皆無」(電子デバイス産業新聞・浮島哲志氏)で、うれしい悲鳴を上げている。

 産業ロボットの世界4大メーカーは、ファナック、安川電機、独KUKA(クーカ)、スイスABB。垂直多関節ロボット世界トップのファナックは、需要は引き続き旺盛とみて、茨城県に約630億円をかけて新工場を建設し、18年8月の生産開始を目指す。山梨県の本社工場と、茨城県の筑波工場3工場とあわせ、生産能力を現在の月間6000台から最終的に1万1000台まで引き上げる。

 同じく4大メーカーの一角で、サーボモーター世界トップの安川電機も7月、中国・江蘇省のロボット製造拠点に第3工場を増設することを明らかにした。

 ロボットメーカーは「これまでは製造業に『ロボットを導入しませんか』と営業していたが、最近は『ロボットを使いたい』という引き合いばかり」と、環境の変化を感じている。

 産業ロボットの関節部分の回転や位置決めを精密に制御する「精密減速機」で世界トップのナブテスコは、今年度、約70億円を投じて津工場(三重県)と、中国の工場を増設して、前年度比約20%増産を見込む。

 自動ラインで対象物を所定の位置に運搬したり、工作機械内の直行運動をつかさどる直動案内機器(リニアガイド)で世界トップのTHKや、リニアガイドとセットで使われることの多いボールねじで世界トップの日本精工も増産体制に入る。

 日本には、世界トップシェアを握る社が多い。日本企業が得意としてきた自動車や電機産業を発展させるため、生産効率化に寄与してきた「縁の下の力持ち」が、今や世界で存在感を示すメーカーに育ったのだ。

技術の進化次第で自動化率はもっと上がる

 工場自動化銘柄は株式市場の一大テーマとなっている。この1年の騰落率はナブテスコが47%、THKは90%超にも達する。半導体や有機EL関連のテーマに一服感が漂う中「工場にはまだ合理化・省力化の余地がある。持続的に注目を集めるテーマ」(奥村義弘ちばぎんアセットマネジメント調査部長)との声は根強い。

 たとえば、自動車工場の自動化率は、プレス工程・溶接・塗装では90%以上に達する一方、複雑な作業を要する組み立ては20%にとどまる。業界アナリストは「ファナックや安川電機が複雑な作業をできるロボットを開発している。技術進化次第では組み立ての自動化率はもっと上がる」と分析する。

 工場自動化の技術は刻々と改良が進んでいる。

 たとえば、現在の産業ロボットは、ライン脇の定位置に配置するのが主流だが、今後は、自在に工程間を行き来する自律移動ロボットの開発・研究が進みそうだ。1台のロボットで複数の作業をこなせることから、購入する台数が少なく、製造現場の省スペース化も可能で、コスト低減につながる。既にオムロンやKUKAが研究・商用化している。

 パナソニックはこの市場の拡大を見込んで、広範囲で三次元距離を計測するセンサー3DLiDAR(ライダー)を開発した。

 進化した自動化技術に対しては、新たな需要が生まれる。しばらくは「工場自動化の好循環」が続きそうだ。

 <次回「中国経済にほころび それでも習近平は毛沢東に並ぶか」>

    ◇    ◇

 この記事は、週刊エコノミスト10月10日号の特集「驚異の工場自動化」をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

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藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。

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