思い邪なし

思い邪なし19 三時間泣きのごてやん(一)

北康利・作家
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第一章 勝ちに見放されたガキ大将

三時間泣きのごてやん(一)

 和夫が生まれる頃には稲盛調進堂の仕事はさらに忙しくなっていた。

 実際に生まれたのは昭和七年(一九三二年)一月二十一日だが、戸籍上は一月三十日となっている(提出はこの翌日)。忙しくて役所に届けるのが遅れたせいであった。

 仕事は入念、納期は徹夜してでも守る。工賃に不平ひとつ言わない。そんな畩市(けさいち)に惚(ほ)れ込んだ紙問屋は、今度は自動製袋機を持ち込んできた。

 「福岡にいい機械があるんだが、誰も使いこなせないので、ひとつ稲盛さんつかってみんかね。支払いは何年…

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。