思い邪なし

思い邪なし21 三時間泣きのごてやん(三)

北康利・作家
  • 文字
  • 印刷

第一章 勝ちに見放されたガキ大将

三時間泣きのごてやん(三)

 家の隣にある印刷所は稲盛にとって格好の遊び場であった。特に興味を持ったのが例の自動製袋機である。

 「よく覚えてますが、長さがこの机の端から端くらいまであって、幅がこの机の倍ほどというものなんです。ローラー同士を太い糸がつないでおりまして、その上を紙がすべっていく。途中に糊(のり)に濡(ぬ)れた糸が端っこのほうに張ってあって、紙がこうきれいに回って折り曲げられてですね、袋ものになって出てくるという。そういう機械でした」

 よほど懐かしかったのか、京セラ本社の応接室で身ぶり手ぶりを交えながら一生懸命語り、この紙袋を作る機…

この記事は有料記事です。

残り890文字(全文1180文字)

   

ご登録日から1カ月間は100円

いますぐ登録して続きを読む

または

登録済みの方はこちら

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。