思い邪なし

思い邪なし22 泣くよかひっ飛べ(一)

北康利・作家
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泣くよかひっ飛べ(一)

 幼い頃の稲盛は先述の通りの甘えん坊で、外でも兄の後ろばかりついて歩く内気な子どもだった。

 「小学校に行く前だったと記憶しておりますが…」

 と稲盛がこの頃の思い出話をしてくれた。

 兄たちと一緒に原良(はらら)の畦道(あぜみち)を歩いている時、小さな灌漑(かんがい)用水にさしかかった。

 それをみんな、手前から走って飛び越えていく。ところが小さい和夫は自信がない。飛び越えようか迷っているうち涙が出てきて泣きべそをかいてしまった。

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。