思い邪なし

思い邪なし23 泣くよかひっ飛べ(二)

北康利・作家
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第一章 勝ちに見放されたガキ大将

泣くよかひっ飛べ(二)

 入学式も無事おわり、父兄は帰っていただいて結構ですと言われたその時、

 「おかあちゃん!」

 と、稲盛が泣き声を上げながら、席を立ってキミにすがりついてきたのである。

 教室中の視線が集まり、キミは真っ赤になってしまった。

“三時間泣き”のスイッチが入ってしまっている。なだめても無駄だ。

 帰るに帰れなくなった彼女は、教室の後ろでたった一人、最後まで残ることとなった。

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。