くらし保険選びの相談室

共働き夫婦が知っておきたい「遺族年金」と備えの仕方

岩城みずほ / ファイナンシャルプランナー

 A太さん(37)とB子さん(37)は共に会社員の夫婦です。5歳の子供がいますが、妻がもし死亡した時に遺族年金が少ないと知り、生命保険金額を増やした方がよいのかどうか私のところへ相談に来ました。年収は夫が約450万円、妻が約400万円です。2人で家計を支えて住宅ローンもペアローンを契約し、それぞれが債務者になっています。

 現在の条件で計算すると、夫婦のどちらが亡くなっても残された側は月約12万円の遺族年金を受け取れます。ただし妻が亡くなった場合、A太さんが遺族年金を受け取れるのは子供が高校を卒業するまでで、それ以降はゼロになります。逆に夫が亡くなった場合、B子さんは子供の高校卒業後も月約4万円を自分の老齢年金が始まるまで受給できます。

遺族基礎年金は子供がいれば受け取れる

 まずA太さん夫婦が心配している遺族年金の仕組みを見てみましょう。

 遺族年金は国民年金または厚生年金の被保険者が亡くなった時に、遺族の年収が850万円未満であれば、亡くなった人に生計を維持されたと見なされて受給対象になります。遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれています。

 遺族基礎年金は子供がいれば受け取ることができ、基本的に子供が18歳になった年の3月末まで受給できます。一般的に高校卒業までです。

 年金額は「年77万9300円+子の加算」で計算されます。子の加算の額は、1人目と2人目はそれぞれ年22万4300円、3人目以降は年7万4800円です。A太さん夫婦は万が一どちらかが死亡した場合、年100万3600円の遺族基礎年金を受け取れます。

遺族厚生年金は夫と妻で違いがある

 遺族厚生年金の受給は、亡くなるのが夫か妻かで変わります。夫が死亡した場合、その妻は子供の有無に関わらず、一生涯受給できます。ただし30歳未満の子供のいない妻は5年間の有期年金となります。37歳のB子さんは夫のA太さんに万が一のことがあれば、再婚しない限り終身で受給できます。

 遺族厚生年金の額は、老齢厚生年金の4分の3相当です。ただし加入期間が短いと年金額が少ないため、被保険者の加入期間が300カ月(25年間)に満たない場合は300カ月として計算します。

 夫のねんきん定期便の「これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額」÷加入月数×300カ月(25年年間)×3/4で、1カ月のおおよその受給金額を計算できます。ちなみに加入期間が300カ月(25年)以上の場合は、「これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額」×3/4で計算します。

 B子さんが現在の条件で試算すると受給額は月4万円ほどでした。これに遺族基礎年金を合わせると月約12万円になります。65歳以降は、自分の老齢厚生年金額を優先して受け取ることになります。

「妻の死亡時に夫が55歳以上」が条件

 では今回A太さん夫妻が心配している、妻が亡くなった場合はどうでしょうか。夫が遺族厚生年金を受給できるのは子供の有無に関係なく、「妻の死亡時に夫が55歳以上」であることが条件です。ただし、18歳未満の子供は通常高校卒業まで遺族厚生年金を受給できます。

 現在37歳のA太さんのように、妻の死亡時に55歳未満の夫は遺族厚生年金を受け取れません。A太さんのケースでは夫が遺族基礎年金を、子供が遺族厚生年金を受給でき、その額は月約12万円です。ただしどちらも子供が18歳になった年の3月末までで、子供が高校を卒業すると遺族年金はなくなってしまうのです。

 A太さん夫婦は収入も同じくらいで、それぞれが住宅ローンの債務者となっています。2人で家計を支えているので、妻の死亡時の方が影響が大きいと考えられます。

 万が一のことがあった場合、今後子供の教育費が増えていくことや、家事代行サービスを利用することなどで支出も増大することを想定した方がよいでしょう。

 B子さんに万が一のことがあった場合、家計の維持が難しいと判断していたA太さん夫婦には、掛け捨ての死亡保険に加入することをおすすめしました。例えばネット生保では、1000万円の死亡保障に20年定期で加入すると月額保険料は1700円程度です。

自営業者は公的保障が薄い

 ちなみに自営業者では、18歳未満の子供がいれば夫婦どちらが亡くなった場合でも遺族基礎年金を受け取れます。しかし子供がいない場合は、受け取れません。会社員に比べて公的保障が薄いので、生命保険に加入する必要性がより高いといえるでしょう。

 特に夫だけが住宅ローンの債務者で妻の収入と合わせて家計を維持している場合、妻の死亡で家計が逼迫(ひっぱく)する可能性があります。

 例えば、60歳まで毎月10万円を給料のように受け取ることができる収入保障保険に加入することが考えられます。ネット生保の月額保険料は、37歳の女性で1960円でした。安い掛け捨ての生命保険は、共働きの妻の死亡時のリスクに備えた選択肢の一つです。

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岩城みずほ

岩城みずほ

ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、オフィスベネフィット代表。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年活動。その後セミナー講師、生命保険会社を経て2009年に独立。個人相談のほか、貯めると増やすの車座の会「C(貯蓄)リーグ」、良質なマネーの勉強会「サムライズ」主催。著書に「人生にお金はいくら必要か」(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)などがある。

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