東京証券取引所の大納会で鐘をたたく、ゆるキャラ「くまモン」=2016年12月30日、内藤絵美撮影
東京証券取引所の大納会で鐘をたたく、ゆるキャラ「くまモン」=2016年12月30日、内藤絵美撮影

スキル・キャリアミスを見逃さない校閲の技術

「くまモン」と「くまもん」正しいゆるキャラ名は?

毎日新聞校閲グループ

 近年話題のゆるキャラにも、れっきとした名前があります。大人気の熊本のゆるキャラ「くまモン」が、2011年の誕生以来、全国版ではありませんが毎日新聞で10件くらい「くまもん」と表記されてしまいました。ゆるキャラというだけあって漢字を使わないものが多いのですが、平仮名か片仮名かで迷うことが少なくありません。

 「ドラえもん」もどこまでが片仮名かわからなくなることもあるのですが、毎日新聞のデータベース(1987年以降)で調べたところ、表記を間違えている一般記事の件数は30年でわずか数件です。1969年の連載開始から半世紀近く。歴史が違うということでしょうか。

名前から絞られる年齢層

 名前から、その人の年齢層が絞られる場合があります。

 例えば「昴」。昴が子の名として届ける際に認められるようになったのは1990年のことです。谷村新司さんのヒット曲「昴(すばる)」によって「なぜ名前に使えないのか」という声が高まったためと考えられます。

 戸籍法は「子の名には常用平易な文字を用いなければならない」と定めており、名前を届ける際に使える漢字は常用漢字2136字と人名用漢字863字(17年10月現在)に限られています。

 「昴」は90年4月に人名用漢字に採用されたため、それ以前で戸籍法施行以降の生まれの人の名には「昴」の字を使えなかったことになります。戸籍を届けるわけではない芸名や通称などはもちろん別ですが。

 そこで校閲記者は、年齢から「昴」とつけられない年の生まれとわかった場合には「もしや、似た字の『昂』の誤りでは」と問い合わせて正すこともあるのです。

 漢字とは違って読み方には制限がありません。難しい漢字というわけではなくとも、読みにくい、もしくは意外な読み方であるといった場合には、ルビをつけることになります。

 「騎士(ないと)」のように、今後はさまざまな名がルビと共に登場しそうです。

本の題名は命

 ある校閲記者のめいっ子が中学生だったとき、毎日新聞社主催の青少年読書感想文全国コンクールで入選し、氏名とともに書籍名が毎日新聞に載りました。知らせてきたその子の母親は「でも、実は本の題名が……」と言葉を濁したといいます。

 記事では、「“エナ”と呼ばれた子」になっていたというのです。その本は、著者が母親から受けた児童虐待の経験をつづったもので、理不尽な仕打ちの数々にも負けず、生きる意欲を失わない姿が読む者を引きつけます。著者は名前がありながら、虐待されていくうちに「あの子」となり、ついには「それ」と呼ばれ、人間性をも奪われていく。その象徴的な言葉がタイトルになりました。

 「“It”と呼ばれた子」という書名なのです。

 確かに「It」を手書きすると、片仮名に見えなくもありません。しかし、「エナ」と呼ばれた男の子の物語となると、本質とかけ離れてしまいます。

 <この連載は、書籍「校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術」(毎日新聞校閲グループ)の内容の一部をウェブ用に編集し直したものです。毎週木曜日に掲載します>

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ミスを見逃さない校閲の技術

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毎日新聞校閲グループ

毎日新聞校閲グループ

毎日新聞は東京に40人余り、大阪に30人余りの校閲記者がいる。原則として広告などを除く全紙面について記事のチェックをしており、いわば新聞の「品質管理部門」。書籍などと比べてかなり短時間で仕事をこなさなければならないのがつらいところ。朝刊の校閲作業は深夜になるため生活は「夜型」である。

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