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自治体の「埋蔵金」って何? 国と地方のせめぎ合い

エコノミスト編集部

 国が財政難なのに、地方は21兆円もの基金を持つことが問題視されている。その実態とは。週刊エコノミスト11月21日号巻頭特集「やりくり上手はあの自治体」よりダイジェストで報告する。

財務省=2017年5月12日、小林祥晃撮影
財務省=2017年5月12日、小林祥晃撮影

財務省と総務省のバトル

 12月は地方自治体にとって勝負の月である。次年度の地方税制・財政の枠組みを決める地方財政対策、通称「地財(ちざい)対策」が大詰めを迎えるのだ。今年話題の一つとなっているのが、各自治体で予算とは別枠で積まれた「21兆円の基金」だ。

 「国の財政状況が悪化している中でも、地方では剰余金を積み立てている」という批判は、これまでも財務省側から陰に陽に、地方財政を所管する総務省や自治体に投げかけられてきた。国税などを原資として自治体に配分する交付税を少しでも減らしたい、という財務省の思惑が透けて見える。今年は5月に経済財政諮問会議で民間議員が「新たな埋蔵金と言われかねない」と批判したことで一層の注目を集める。

 果たして、自治体は過剰に基金を積み立てているのだろうか。

 基金には(1)急激な歳入減・突発の歳出増に備えて積み立てる「財政調整基金」(2)将来の借金返済(地方債償還)に備えて積み立てる「減債基金」(3)その他、庁舎建て替えなど個別用途に備えて積み立てる「特定目的基金」の3種類がある。このうち、多くの自治体で重視しているのが(1)の財政調整基金だ。

総務省が入る庁舎(手前左)=2013年11月15日、梅村直承撮影
総務省が入る庁舎(手前左)=2013年11月15日、梅村直承撮影

財政調整基金の積み立ては十分ではない?

 週刊エコノミスト編集部は、この財政調整基金が、不測の事態があっても、即、財政再生団体に陥らない水準かどうかを調べた。

 具体的には、2016年度の決算速報値をもとに、標準財政規模に占める財政調整基金の割合が5%(市町村では20%)以上かを見た。5%以上あれば、仮に標準財政規模に占める歳入不足が5%になっても穴埋めできるからだ。「標準財政規模」とは、「人口○人のこの自治体で標準的な行政運営をすれば、このぐらい見込めるだろう」という財源額を示したものだ。

 標準財政規模に占める赤字比率が5%(市町村では20%、東京都は別途設定)に達すると、破綻状態である「財政再生団体」に転落し、行財政運営に厳しい制約が課せられる。財政再生団体に転落した北海道夕張市が、公立学校統廃合やごみ収集有料化を余儀なくされたのは記憶に新しい。

夕張市役所=2017年2月22日、千々部一好撮影
夕張市役所=2017年2月22日、千々部一好撮影

 財政調整基金の割合がこの水準をクリアしたのは、都道府県では東京都や大阪府など14都府県▽政令指定都市(人口50万人以上)では大阪市のみ▽中核市(同20万人以上)では愛知県豊田市など4市にとどまった。これら計115自治体のうち、19と2割未満に過ぎない。「埋蔵金」とは指摘されたが、少なくとも財政調整基金については十分な積立額とは言い難い。

 明らかになった数字は、自治体の置かれた立場や首長の考え方を反映する。積立額が大きい東京都や豊田市は、地元に大手企業が立地しており、税収の多くを、年度ごとのぶれが大きい法人2税(法人住民税、法人事業税)に頼っている。東京都財務局は「景気変動が大きい不安定な財政構造なので、財源が著しく減る事態に備えた」と説明する。

 一方で、京都市は残高がゼロ。円高で地元メーカーの業績がふるわず税収が減ったために基金を取り崩した結果だ。

京都市役所前広場=2017年4月20日、篠田直哉撮影
京都市役所前広場=2017年4月20日、篠田直哉撮影

余裕がありすぎると議員から「もっと事業に使え!」

 財政調整基金はいくら、あるいは何割積まなければいけないという全国一律の基準はない。だが、独自基準を設けている自治体は多い。

 富山県は財政調整基金だけを見れば低いが、「他の基金とも合わせて標準財政規模の5%程度を目標にしている。現在はこのレベルを確保している」(財政課)。財政当局者には「財源規模の5%」(市町村は20%)というラインが頭の隅にあるようだ。

 5%に満たない県にも思惑がありそうだ。ある県の財政当局経験者は「積み立てすぎると、県議や各部署から『そんなにお金があるならば、基金を取り崩して新たな事業をしてほしい』と歳出圧力が強まる」と話し、「少し足りないぐらいに見せるのも腕の見せどころ」と証言する。4%台の県が多いのも、この証言を裏付けるかのようだ。

野田聖子総務相=首相官邸で2017年11月10日、川田雅浩撮影
野田聖子総務相=首相官邸で2017年11月10日、川田雅浩撮影

 基金への疑問が高まったのを機に、総務省は11月7日に自治体の基金実態調査を公表した。この中で「何を基準に積立額を決めているか」を都道府県に尋ねたところ、「過去の取り崩し実績(災害等)から必要と算定した額」34%▽「決算を踏まえて可能な範囲で」34%▽「財政指標(標準財政規模、一般財源規模など)の一定割合」31%──が多かった(複数回答可)。

地方消費税はどの自治体のもの?

 今年の地方財政でもう一つ話題になっているのが、地方消費税の配分方式だ。消費税は8%を国が徴収し、うち1.7%を都道府県に割り当てる。現在は、消費額に重きを置いて配分されるため、東京都や大阪府など一大消費地である都市部の額が多い。

 この配分方式だと、たとえば奈良県民が大阪府でモノ・サービスを得て支出した消費税は、大阪府の税収につながる。居住地ではなく消費地が税収を確保できる仕組みのため、消費額が相対的に少ないベッドタウンの自治体からは疑義が出ていた。

 潮目が変わったのは10月末。財務省が、人口を重視した配分への見直しを提案したのだ。この案で税収減につながる東京都は反発、野田聖子総務相も「税収を最終消費地に適切に帰属させるのが基本中の基本」と疑義を呈した。

 一方、これまで地方消費税の配分が少なかった県には税収増となる。財務省にとっては、税収が増える県への交付税を減らせる可能性がある。

 複雑に利害が絡み合う中、財務省・総務省・自治体は早くも火花を散らしている。

(詳細な自治体の2016年度決算速報値の表は「週刊エコノミスト」11月21日号参照)

 <次回「税理士・会計士はどうなる? AIクラウド会計の威力」>

    ◇    ◇

 この記事は、週刊エコノミスト11月21日号の巻頭特集「やりくり上手はあの自治体」をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

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エコノミスト編集部

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藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。

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