第一章 勝ちに見放されたガキ大将
泣き虫からガキ大将へ(三)
悪事はやがて露見する。加藤勝美著『ある少年の夢』によれば、子分の一人が当時流行のメリケンサックをはめていじめているうち、その子の頬に怪我(けが)をさせてしまったのだという。
これでは隠しようがない。母親に問い詰められ、それまでのいじめを洗いざらいしゃべってしまったから大変だ。
翌日、稲盛が登校すると、いつもと雰囲気が違っている。普段ならすぐそばに寄ってくる子分たちの姿が見えない。おまけに始業時間になっても先生が教室に現れない。嫌な予感がしていたら、案の定、職員室へと呼び出された。
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北康利
作家
1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。