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「職場つみたてNISA」は人材確保のツールとなるか

浪川攻・金融ジャーナリスト

 「職場つみたてNISA」をご存じだろうか。来年1月から取扱い開始となる積み立て投資版NISA(少額投資非課税制度)を官公庁、民間企業などの職場で取り扱っていく制度である。まずは、同制度の監督官庁である金融庁自身が職員向けのマニュアルを策定し開始しようとしている。

 つみたてNISAの対象となる投資信託は、購入者が支払う販売手数料や信託報酬が通常の投資信託より格段に安い。この制度が投資経験のない若手世代の資産形成を目的としているため、投資しやすさという観点からそのような商品になったと言える。しかし、それだけに、銀行や証券会社といった取り扱い金融機関からは「採算に合わない」といった理由から取り扱いに消極的な声が少なからず上がっている。

 確かに人件費などを踏まえると、採算性に合わないビジネスなのだろう。だが、とりわけ証券会社の場合、つみたてNISAの対象とされる若手世代向けの勧誘活動を長らく怠ってきたことは否定できない。小金持ちの中高年ばかりに営業エネルギーを割いてきたのだ。したがって、ここで採算が合わずとも、将来に向けて田畑を耕し、タネを蒔くという気概を垣間見せてもいいように思う。

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金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。