思い邪なし

思い邪なし42 鹿児島大空襲(一)

北康利・作家
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鹿児島大空襲(一)

 昭和二十年(一九四五年)四月、稲盛は鹿児島中学に入学した。家の裏だから、始業のベルが鳴ってからでも走っていけば間に合うのは助かった。

 一中、二中を落ちた連中が多かったが、だからといって学力レベルは低くない。陸士や海兵といった、今の東大よりも難しい上級学校に入る先輩も多かった。

 だが受験失敗のショックは尾を引いている。自分は運がないというマイナス思考が染みついてしまい、ある日も制服の配給切符の抽選に並んだが、当たらないという確信があった。実際、抽選に漏れ、ため息をついた。

 相変わらず彼の夢は軍人になることである。陸軍航空士官学校からパイロットになり、お国のために尽くしたい。当たり前のようにそう思っていたが、戦争はすでに最終局面を迎えていた。

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。