思い邪なし

思い邪なし46 終生の友(一)

北康利・作家
  • 文字
  • 印刷

第一章 勝ちに見放されたガキ大将

終生の友(一)

 キミは戦後、自分の着物を売って食糧に替えた。

 当時の都市部の人間ならみな経験のあることだったが、キミはそれをすべて家に持ち帰らずに一部を闇市で売り、効用を最大にした。着物がなくなると今度は古物市で着物を仕入れ、それを農家に持っていって米に替えた。

 当時は交通事情が悪く、すし詰めのバスに乗らねばならない。胃腸の弱かったキミにはきつい仕事だったはずだ。

 だが、こうしたキミの頑張りもあって、稲盛家は粟(あわ)を食べるといった悲惨な生活をせずに済んだのだ…

この記事は有料記事です。

残り1020文字(全文1269文字)

   

ご登録日から1カ月間は100円

いますぐ登録して続きを読む

または

登録済みの方はこちら

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。