思い邪なし

思い邪なし50 薬学部を目指して(三)

北康利・作家
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薬学部を目指して(三)

 「大阪で下りたら地下鉄か環状線で天王寺へ行くんやな」

 電車で乗り合わせたおじさんから教えてもらい、なんとか玉造にたどりついた。

 先方の住所を聞きながら家を探していると、向こうも稲盛を探しているところにばったり出会えてほっとした。だが、うまくいったのはここまでだった。

 神経をすり減らし、若いとは言え疲労困憊(こんぱい)である。実力が発揮できず、苦労して大阪まで出かけたというのに結果は不合格だった。

 若者に課せられた大きな試練である“受験”に、稲盛は一貫して失敗し続けた。

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。