思い邪なし

思い邪なし53 鹿児島大学時代(三)

北康利・作家
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鹿児島大学時代(三)

 家に余裕がないことから、着たきりのジャンパーと下駄(げた)で通しながら、ほとんど毎日図書館に通い、勉学に明け暮れた。

 <「落第しないですむ」だけの成績で満足するか、一番になるために常に敢然として立ち向かっていくのかは、単なる成績以上の問題なのです>

 稲盛は著書『成功への情熱』の中に「並みを超える」という一章を設けてそう記し、燃えるような向上心を持ち続けることの大切さを説いている。鹿児島一中を二回受験したことでも分かるように、これまでの稲盛も向上心は持っていたが、それを実現するための克己心がまだまだ足りなかったという反省があった。

 彼は「並みを超える」というその章の最後に、<もっとも偉大な能力とは、自分自身に打ち克つ能力なのです>と書いているが、鹿児島大学に入ってから、まさに彼の克己心が目覚めはじめるのである。

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。