思い邪なし

思い邪なし56 セラミックスとの出会い(二)

北康利 / 作家

第一章 勝ちに見放されたガキ大将

セラミックスとの出会い(二)

 無機化学の勉強を始め、卒業論文の作成に費やしたこの半年間はほとんど不眠不休と言ってよく、フィールドワーク、実験室、そして図書館での文献渉猟と多忙な日々が続いた。若いが故に体力に恵まれていたこともあって、猛烈な集中力で研究にいそしんだ。

 今ほど充実した研究施設があるわけではない。ちょうど電子顕微鏡が入ったばかり。粘土の質量分析の前に、まず質量分析をする測定器から作る必要がある。

 島田が他大学の測定器を見て描いたスケッチを参考にしながら、熱膨張計などを見よう見まねで製作した。人…

この記事は有料記事です。

残り933文字(全文1203文字)

北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。