第二章 京セラ設立
松風工業入社(一)
稲盛が入社した松風工業という会社は京都の南の郊外(現在の長岡京市)にあった。明治三十九年(一九〇六年)、清水焼窯元の三代目松風(しょうふう)嘉定(かじょう)によって創業され、高圧碍子(がいし)を日本で初めて製造した名門企業である。
碍子は電線を支柱などに絶縁固定する器具をいい、当初は陶磁器メーカーが取り扱う例が多かった。松風工業が京都で創業したのも、京都に焼き物の長い歴史があったためであり、そうした京都という土地の持つ歴史的バックボーンは、その後の京セラにも引き継がれていくことになる。
セラミックスの語源はギリシャ語にある。動物の角の形状に作った容器をケラミオン(KERAMION)といい、この容器を作る技術をケラメイア(KERAMEIA)という。これらの言葉からドイツ語のケラミック(KERAMIK)、英語のセラミック(CERAMIC)に派生していったとされている。
この記事は有料記事です。
残り887文字(全文1293文字)
投稿にはログインが必要です。
連載:思い邪なし
- 前の記事
- 思い邪なし56 セラミックスとの出会い(二)
- 次の記事
- 思い邪なし58 松風工業入社(二)
注目コンテンツ