
今に限ったことではないのかもしれないが、このところ、若い人たちと話していると物事のありようを考えたいとか、生きる意味を見つけたいとか、そんな思いに接することがときどきある。ただそれは、はっきりと形を持っているのではない。淡くてぼんやりとしている。
だから、哲学書を開いたり、思想史の講座を聞きに行ったりといった行為にはなかなか結び付かない。「考えたい」という気持ちはほのかにあっても、何をしたらいいかわからないし、哲学や思想は敷居が高いというのが実情だろう。
吉野源三郎の原作、羽賀翔一のマンガによる「漫画 君たちはどう生きるか」(マガジンハウス)が人気を集めているのには、こんな背景があるのではないだろうか。
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重里徹也
文芸評論家、聖徳大教授
1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。