思い邪なし

思い邪なし59 松風工業入社(三)

北康利・作家
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松風工業入社(三)

 入社後も川上とは、稲盛が大阪に行ったり向こうが京都に来たりしながら、三カ月ごとくらいに会っていた。

 「お前なぁ、しょうもないヤツがおるんや」

 川上はそんな稲盛の愚痴をよく聞いたという。川上は川上で、入社してすぐ耕耘機(こううんき)の耐久試験をやらされ、毎日、朝八時から五時頃まで田んぼを掘り起こしていたから負けじと愚痴がこぼれでた。

 それにしても松風工業の社内事情は想像以上だった。稲盛は入社当初、給料というものは月に四回に分けて貰(もら)うものだと思っていたという。給料の遅配や分配が常態となっていたのである。

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。