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柳美里「ゴールドラッシュ」14歳少年の混乱の果て

鶴谷真・大阪本社社会部

 主人公の「少年」は14歳の中学2年生だ。「少年」の一部分はあまりにも早く大人になっており、一方で著しく幼いままの部分も多い。その精神は混乱の果てに青春期のはるか手前で大爆発してしまう。柳美里(ゆう・みり)さんの「ゴールドラッシュ」(新潮文庫)である。

 1998年に刊行されると、血みどろの気迫に満ち、理論理屈から遠ざかることで強い説得力を宿す筆致が多くの読者の胸を打った。ドストエフスキーの「罪と罰」にも例えられる大作である。

 柳さんはその前年の97年に神戸市で児童連続殺傷事件を起こした14歳の少年の「心の闇」に入り込もうと、本作に挑んだ。

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大阪本社社会部

1974年、神戸市出身。2002年に入社し、京都支局や学芸部などを経て22年から大阪地方部。