
トヨタ自動車が水素を用いる燃料電池車(FCV)の「MIRAI」を発売した時、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「フューエルセル(燃料電池)はフールセル(バカ電池)」と切って捨てた。筆者も燃料電池車は普及しないと言い続けている。
そもそも、水素についてはいくつかの大きな誤解がある。トヨタのサイトには、「宇宙でいちばん豊富といわれる、クリーンエネルギー、水素」という表現がある。しかし、地球上では、「豊富」も「クリーン」も「エネルギー」も間違いだ。
確かに、水素は地球上でも豊富ではある(一番ではない)が、そのほとんどが、水などの化合物の形であり、エネルギー源として使える単体の水素(H2)はほとんどない。従って、水素は水(H2O)の電気分解、あるいは、天然ガス(メタンガス=CH4)の改質などで取得する必要があるが、そのためにはエネルギーが必要。つまり、水素は「エネルギー」そのものではなく、エネルギーを運ぶ媒体でしかない。
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村沢義久
環境経営コンサルタント
1948年徳島県生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得後、米コンサルタント大手、べイン・アンド・カンパニーに入社。その後、ゴールドマン・サックス証券バイス・プレジデント(M&A担当)、東京大学特任教授、立命館大学大学院客員教授などを歴任。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。