スキル・キャリアキャリアを築くヒント

「要するに」を口癖に出世した営業マンの思考回路

細川義洋 / ITコンサルタント

 私は、いくつかの職場を渡り歩いてきました。またIT企業在籍中は多くの顧客企業に常駐し、業務上で多くの人と接してきたことになります。

 その中で気づいたことの一つに、出世する人がよく使う「口癖」があります。もちろん、必ずあてはまるわけではありませんが、昇進して大きな仕事をするような人の中には、次の言葉を使う人が多いという実感があります。それは、「要するに」です。

先輩営業マンの顧客とのやりとり

 私がIT企業の営業担当だったころの先輩営業マンもこの口癖の持ち主でした。先輩とともにある顧客を訪問した際のことです。顧客からは「社内サーバーのハードディスクを増設したい」という相談を受けました。稼働中のシステムや使用するソフトウエアはそのままで、新しくハードディスクを増設して設定するだけです。作業自体も簡単な数十万円程度の小さな商談でした。

 ところが、先輩が顧客の担当者から詳しい話を聞き出したことで、後に商談は思わぬ方向に展開していきました。

 先輩は、「そもそもなぜハードディスク増設が必要になったのか」と尋ねました。顧客の担当者は、「システム導入時に見込んでいたよりも取引先や注文数が増え、データを登録しきれない。パンクした状況です」と説明しました。

 先輩の隣に座っていた私は「必要なハードディスクの容量だけ聞き出せばいいのに」と思っていました。しかし先輩は、顧客にシステムを構築した際の要件定義書(システムの機能や性能を定めた資料)を見せてほしいと要望しました。

システム丸ごと更新の提案につなげる

 後日、顧客から送られてきた要件定義書を見た先輩は、私に「これはシステムを丸ごと入れ替える提案ができるぞ」と言って、次のように続けました。

 「要するに、この顧客は数年後の自社の状況を予測できなかったんだ。業務の質や量がどう変わるか見定めないままシステムを発注した。だから今のシステムは、現状の業務の仕方に合わない点がたくさんあるんだ」

 顧客のシステムは、本来は自動入力できる部分で社員に入力を課すなど、業務処理の流れを滞らせるところがいくつもありました。注文数の増加を想定できていなかったのです。また、システム自体が外部からの攻撃に弱く、データを盗まれる危険性がありました。情報流出のリスクも予測していなかった結果です。

 先輩は、顧客が直面した困りごとから解決すべき課題を探り出し、システム全体に問題があることを導き出しました。その結果、数カ月後にこの顧客からシステム全体のリニューアル作業を受注し、先輩は数千万円の商談をまとめることになったのです。

課題や問題の本質をつかむ能力

 先輩は、普段から「要するに」を“積極的に”使っていました。積極的というのは、いくつかの情報を集めて、その共通点を見つけようとする姿勢ではありません。

 「ハードディスクのパンク」という問題を表面的に解決するのではなく、「要するに」を使って奥にある真因を探るために、顧客からシステムを作った際にまとめた要件定義書を出してもらいました。当てずっぽうでもいいので、問題解決につながる足りない情報を探していたのです。

 営業だけでなくどんな職種でも、課題や問題の本質をつかめる人は昇進して責任ある仕事を任されるケースが多いように思います。「要するに何が問題なのだろう」といった考え方を常に心がけているのです。もちろん、先輩は数年後、同期中で最も早く課長になりました。

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細川義洋

細川義洋

ITコンサルタント

1964年、神奈川県生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。NECソフト(現NECソリューションイノベータ)、日本IBMでシステム開発やコンサルティングを行う。著書に「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」「IT専門調停委員が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則」(日本実業出版社)などがある。

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