
昨年秋に起きた大相撲の横綱による傷害事件はさまざまな方向へ広がり、年を越しても議論が続いています。一連の議論の中で、貴乃花親方の言動はずっと注目されてきました。親方の置かれた立場からすればもちろんのことですが、加えて沈黙し続けたことがその理由です。
「いったい親方はどう思っているのか」「言葉にして周囲を納得させることが必要ではないか」など、その沈黙に対しての疑問、批判が多く出てきました。一方、親方の無言の対応を批判した日本相撲協会評議員会の池坊保子議長の言葉もまた反発にあっています。
当の親方は、ようやく週刊誌に心情を一部吐露しているようですが、公式にはほとんど何も語っていません。なぜ沈黙するのかは定かではありません。しかし、なにかを語るのではなく、語らないことである一定の効果を出していたことは確かです。
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川井龍介
ジャーナリスト
1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。