第二章 京セラ設立
若きリーダー(三)
松風工業の近くの明治製菓のキャラメル工場で包装工を募集しており、妹の綾子がそこで働くことになった。これまで彼女は山形屋に勤めて家計を助けていたが、時には大学生だった兄の和夫にもお小遣いをくれるようなやさしい妹だった。キミに似てしっかり者でもある綾子の上洛は心強く、食事の用意はもちろん家計のやりくりまでみんな任せてしまった。
と言っても、後年の経営手法と同じでまず予算を決め、それを綾子に渡すのだ。それはやっていけるぎりぎりの厳しい額であったと綾子が当時の苦労話をしてくれたが、それもすべて両親への仕送りのためであった。
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北康利
作家
1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。
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