思い邪なし

思い邪なし69 スト破り(二)

北康利・作家
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スト破り(二)

 稲盛のスト破りは経営者におもねったわけでも何でもなかったが、経営者側は稲盛の意図を誤解した。

 工場に常務がやって来て、感激の面持ちで、

 「ありがとう!」

 と稲盛の両手をつかんで握手すると、ポケットに何百円かの紙幣をねじ込んだのだ。

 稲盛にすれば心外だ。

 「何されるんですか!」

 と言ってすぐにその金を突き返した。

 「こんなものをもらうためにしてるんじゃないです。われわれの仕事を守るためにやってるんです。会社のためにやってるんじゃありません」

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。