電気自動車(EV)の製造ライン=中国・合肥市の安徽江淮汽車集団で2017年12月6日、赤間清広撮影
電気自動車(EV)の製造ライン=中国・合肥市の安徽江淮汽車集団で2017年12月6日、赤間清広撮影

IT・テクノロジー知っておきたい電気自動車

中国が国策で電気自動車の導入を後押しするワケ

村沢義久 / 環境経営コンサルタント

 中国で電気自動車の販売が急速に伸びているのはなぜか。それは中国政府が、国策として電気自動車導入を促進しているから。そのため、さまざまな優遇策が設けられている。

 優遇策のうち代表的なものが、電気自動車の購入者に支払われる補助金。日本円にして最大で100万円余りが支給されるので、400万円する電気自動車でも購入者の負担は300万円以下にまで下がる。

 また2019年から、カリフォルニア州の規制に似た制度が導入されそうで、自動車メーカーは一定比率(初年度は10%)以上の電動車(電気自動車およびプラグインハイブリッド車)を販売することを義務付けられる。未達成のメーカーにはペナルティーが適用される。

 さらに、中国政府は、将来的には、フランス、イギリス、ノルウェーなどと同様、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を禁止する措置を検討していることを明らかにしている。

先進国を追い越す「千載一遇のチャンス」

 さて、この「国策」。大気汚染の拡大を食い止めることが目的、ということになっている。それが主たる目的の一つであることは間違いないが、他にも理由がありそうだ。

 自動車産業において、先進国に一気に追いつき追い越したい中国にとって、電気自動車の出現は千載一遇の大チャンスだ。ガソリン車では、過去100年間の蓄積を持つ先進メーカーには、技術面でも、ブランドイメージでもかなわない。

 しかし、電気自動車は構造が簡単。しかも、勝負の土俵が、モーター、バッテリーなど、自動車固有でない技術に移っているから、ハンディキャップがない。それどころか、先進国では、部品メーカーとのしがらみがあって電気自動車にシフトしにくいが、歴史の浅い中国でははるかにやりやすい。さらに、石油の輸入を減らしたいというニーズもありそうだ。

電気自動車はナンバー取得が容易

 中国における電気自動車優遇策は補助金だけではない。まず、購入時のナンバープレート取得が大幅に容易になる。北京では、自動車を購入する前にナンバープレートを取得する必要があるが、交通渋滞と大気汚染を抑制するため、11年1月から発行できるナンバーの数に制限が設けられた。北京の他にも、上海、広州、天津などでも同様の制限が設けられている。

 上海の場合は、オークション制になっており「金でナンバーを買い取る」ことになる。この落札価格が120万円とかになり「車両価格より高い」として話題になった。一方、北京では、ナンバーを取得できるかどうかは150倍(時には600倍)とも言われる抽選による。つまり、抽選に当たらない限りいくら金があっても自動車を購入できない。

 しかし、電気自動車は規制の対象外で、いつでもナンバープレートの交付を受けられる。実際、ガソリン車を買おうとして何年も待たされた人が電気自動車に変えたらすぐに取れたという例が報告されている。

北京市中心部の走行規制も対象外

 購入したあとにも優遇策は続く。北京では、08年10月からナンバー別の走行規制を行っている。これは、北京五環路(北京市中心部から10キロほど外周を通る環状道路)より内側の北京市中心部で、平日朝7時から夜8時までの日中に走行できる車両をナンバーによって制限するもの。

 具体的には、5桁のナンバーの下1桁の数で、曜日ごとに道路を走れる車と走れない車が決められる。例えば、月曜日の場合、末尾ナンバーが1と6の車、火曜日は2と7、水曜日は3と8、という具合。面白いのは、何曜日に規制を受けるかは時期によって変わっていること。

 全ての車のオーナーが週に1回だけ車を利用できないことになるのだが、電気自動車はその対象外で、いつでも制限なく道路を走ることができる。

 <「知っておきたい電気自動車」は毎週月曜日に掲載します>

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村沢義久

村沢義久

環境経営コンサルタント

1948年徳島県生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得後、米コンサルタント大手、べイン・アンド・カンパニーに入社。その後、ゴールドマン・サックス証券バイス・プレジデント(M&A担当)、東京大学特任教授、立命館大学大学院客員教授などを歴任。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。

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