思い邪なし

思い邪なし80 朝子との結婚(二)

北康利・作家
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朝子との結婚(二)

 長春は東京帝国大学から博士号を贈与され、京都のタキイ種苗の農場長をしていたが、戦後、GHQの憲兵がジープでタキイの農場にやって来てこう告げた。

 「日本ですばらしい業績をあげている禹長春に帰国してもらい、キムチの材料である白菜の改良に取り組んで欲しいと韓国政府から要請が来ている」

 こうして長春は朝鮮半島に渡ることになった。小春は夫が活躍できるチャンスだというのでこころよく送り出した。向こうで彼は期待通りの活躍をし、李承晩(イ・スンマン)大統領の謁見も受けている。

 稲盛によれば、年に何回かは日本に帰ってきて、その時に生活のための金をもってきて小春に渡していたというが、留守宅の生活は決して楽ではなかった。

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北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。