
ニューヨーク・都市再生の現場編(4)
ニューヨークの地下鉄は、かつてに比べて飛躍的に安全できれいになった。その全線に乗った経験がある筆者だが、今回は延伸された区間を中心にいくつかの路線に乗ってリポートする。ただ改善されたニューヨークの地下鉄も、東京や他の主要都市と比べてみると欠点が見えてくる。
かつての危険な街「サウスブロンクス」に宿を取る
ニューヨーク地下鉄と言えば、かつては「暗い・汚い・危険」の“3K”で知られていた。しかし1990年あたりを底にしたニューヨークの経済再生の中で、沿線の治安は大幅に改善し、車両や設備、サービスの改善も“遅々として進んで”いる。2015年には、7号線が1駅間延長され(26年ぶりの新区間開業)、17年にはQ線が3駅間延長された。そこで17年10月の訪問の機会に、これら延伸区間に乗車してみたのだが、新線でも“NYはNY”だった。
マンハッタンのホテルは最近、狭くて汚い部屋でも1泊3万~4万円はする。世界の富裕層を相手にホテルから賃貸マンションへの転換が増え、部屋数が減っているのに、万事規制の大好きな市当局は、民泊を禁止したままだ。
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藻谷浩介
地域エコノミスト
1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。