藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

クロアチア・ザグレブで思うセルビアとの民族紛争

藻谷浩介・地域エコノミスト
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旧ユーゴ時代を象徴する“迷車”「ユーゴ」。後ろの市電もたまたま旧型車(写真は筆者撮影)
旧ユーゴ時代を象徴する“迷車”「ユーゴ」。後ろの市電もたまたま旧型車(写真は筆者撮影)

 「六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字を持つ、一つの国家」と称していた旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国は、1990年代初頭に七つの小国へと解体した。2014年の夏にこのエリアを訪れた筆者は、七つの中ではスロベニアと並ぶ経済先進地と言われるクロアチアの首都・ザグレブを歩きながら、美しい街並みの背後にある、この国の経済的な苦境を感知する。

 ザグレブの美しい旧市街を見下ろす丘。そのさらに奥にあった高級ショッピングモール2軒のうち、1軒は閉鎖され、残る1軒も閑散としていた。2009年のユーロ・ショックから立ち直れなかったのだろう。旧ユーゴ分裂後も優等生として生き残ってきたと聞いていたクロアチアだが、コトはそう簡単には進んでいなかったようだ。

 ホテルの方向に戻りながら、やや冷静になって観察してみると、スマートフォンをいじっている人はちらほらで、まだまだ普及途上だと見て取れた。ファストフードや、ブランド服飾の世界的なチェーンの店も、あまり見かけない。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。