思い邪なし

思い邪なし92 若手社員の反乱(二)

北康利 / 作家

第二章 京セラ設立

若手社員の反乱(二)

 労働問題が発生した昭和三十六年(一九六一年)春は、ちょうどマルチフォームガラスの量産化を開始した時期であり、U字ケルシマに代わる主力商品に育てねば会社の存続に関わるというので全社一丸となって生産増強に取り組んでいた。当然、工場は毎日フル回転である。

 それでも中卒の社員は夜間高校に通わせていたから定時に帰らせる。それが高卒になると、当然のように何時間でも上司に付き合わされ、土曜祝日は基本的に出勤。時には日曜まで駆り出される。不満が積み重なっていた。

 後で聞けば、脱落者を出さないために血判までしていたという。おそらく創業時の血判状の話を聞き及んでい…

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北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。