社会・カルチャーベストセラーを歩く

「おらおらでひとりいぐも」読者を静かに力づける一冊

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 平日の午後。東京都内の街には、高齢の男女があふれている。公立図書館、カフェ店、公園のベンチ、病院の待合室、ショッピングセンターの無料休憩所。彼らを見ながら、余計なお世話だが、毎日一体、どんなことを考えているのだろうと思うことがある。

 もちろん、そんな光景を眺めている私も、「街の老人」予備軍だ。大学へ行かない日など、家の近辺を散歩し(他人から見れば、さまよい歩いているように見えるだろう)、喫茶店や図書館で本を読み、また、散歩し、スマホの歩数計が1万歩を超えたら帰宅する。それは少し寂しいが、充実した時間でもある。

 芥川賞を受賞した若竹千佐子の「おらおらでひとりいぐも」(河出書房新社)の主人公「桃子さん」は74歳…

この記事は有料記事です。

残り1517文字(全文1825文字)

重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。

イチ押しコラム

職場のトラブルどう防ぐ?
 

働き方改革のしわ寄せ?「収入半減」パート女性の嘆き

 A実さん(55)は、チェーン展開する自宅近くのクリーニング店で受付のパートとして働いています。昨年「働き方改革」への対応で店舗に…

メディア万華鏡
婚約が内定、記者会見される秋篠宮家の長女眞子さまと小室圭さん=東京都港区の赤坂東邸で2017年9月3日、代表撮影

「開かれた皇室」が生んだ?小室さんスキャンダル報道

 ガソリン、投下しちゃった。秋篠宮家の長女眞子さま(27)との婚約が延期となっている米国留学中の小室圭さん(27)が1月22日、母…

知ってトクするモバイルライフ
第2弾の100億円還元キャンペーンを発表するペイペイの中山一郎社長=東京都千代田区で、今村茜撮影

ペイペイ再び「100億円キャンペーン」は小粒に還元

 ソフトバンクとヤフーが合弁で設立したQRコード決済事業者のペイペイが、総額100億円キャンペーンの第2弾を2月12日から始める。…

ニッポン金融ウラの裏
 

変革の時代に「動かない」言い訳を探す銀行の勘違い

 銀行が変革の時代を迎えていることはいまさら言うまでもない。しかし、そのような言葉がマスコミをにぎわしている割には、銀行業界で実際…

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
荒野の中の一軒宿でもてなしてくれた夫婦。彼らはアフリカーナー(オランダ系白人)だった(写真は筆者撮影)

南アに囲まれた「レソト王国」入国直前まさかの撤退

 ◇南アフリカ編(6) 南アフリカに囲まれた小さな王国レソトに最も近い田舎町レディブランドまで、700キロ近くを1日で走ってきた筆…