思い邪なし

思い邪なし96 創業五周年

北康利 / 作家

第三章 世界を見据えて

創業五周年

 原町の工場は狭かったから昼休みに野球はできず、せいぜいキャッチボールだった。それも往来を気にしながら道路でやるしかない。

 あるときボールがそれて向かいのたばこ屋に飛び込み、壁に当たってはがれ落ちた漆喰(しっくい)がおばさんの作っていた味噌(みそ)汁の鍋に落ちてしまったから大変だ。稲盛は彼らに代わって謝りに行った。

 だが気分転換に身体を動かすことはさせてやりたい。

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北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。