「彩湖・道満グリーンパーク」で開催されたバーベキューの様子=筆者提供
「彩湖・道満グリーンパーク」で開催されたバーベキューの様子=筆者提供

社会・カルチャー地域活性化の挑戦者たち

「BBQと日本酒」埼玉県戸田市の魅力作る飲食店幹部

櫻田弘文 / クエストリー代表取締役

 埼玉県南端に位置し、荒川をはさんで東京都に接する戸田市は、約14万人の住民の平均年齢が40.2歳(2017年1月現在)と22年連続で県内一若い。生産年齢(15~64歳)人口の割合も約69%(同)で、県内で最も働き盛りの世代が多い。

 戸田市の魅力は都心へのアクセスの良さだ。市南部の戸田公園駅から新宿駅まではJR埼京線快速で約20分。都心のベッドタウンとして新婚夫婦などが移り住み、1980年代後半から人口が増え続けている。ところが、名産品や観光地が少ない。

 この状況をチャンスに変えようとしている人がいる。戸田市を中心に埼玉県内で30店以上のカフェや居酒屋を運営する株式会社ロット取締役・鈴木健史(たけし)さん(39)だ。鈴木さんのコンセプトは、「BBQ(バーベキュー)×日本酒」である。

「バーベキューと日本酒」で戸田市の魅力作りを目指す鈴木健史さん
「バーベキューと日本酒」で戸田市の魅力作りを目指す鈴木健史さん

観光地、名産品のないベッドタウン

 鈴木さんは、同社が02年に戸田公園駅前に出店したカフェの創業メンバーで、店舗運営を担当してきた。現在同社は、戸田市内だけで19店舗を運営している。鈴木さんは、創業当初を振り返って次のように言う。

 「戸田市内には若者が気軽に行ける飲食店が少なく、当店はとてもはやりました。ただ私自身、戸田で生まれ育ち家族を持つようになって、若者や家族連れが日中から楽しめるような観光地が少なく、名産品もないと感じていました」

 そうした思いを抱えていた鈴木さんが出会ったのが、採用コンサルタントの深澤了さんだった。15年のことだ。鈴木さんは、深澤さんが本業の傍らで行う「まちいく」という取り組みの話を聞き、興味を持った。

太陽の下で楽しむ日本酒を作る

 「まちいく」は、深澤さんが主導する、街中の強みを掘り起こす取り組みだ。自治体とは組まずに、生産者や企業が手を結び、地元住民と地域外の人が参加するのが特徴だ。深澤さんは地元の山梨県富士川町を盛り上げるため、120年前まで造り酒屋だった実家の銘酒「本菱」を復活させる取り組みを16年春から行っていた。

 これに参加した鈴木さんは戸田でも強みを見つけるために、参加者を募った。集まった参加者12人と半年間、月1回程度のペースで、地域資源を見つけるためのワークショップなどを行った。たどり着いたのが、「バーベキューと日本酒」で戸田市を盛り上げるアイデアだった。

ワークショップの参加者たち
ワークショップの参加者たち

 鈴木さんは、「若い世代の家族が多く、自然豊かな公園があり、子育てしやすい街のイメージに合うものとして、家族や仲間でするバーベキューに着目しました。それに加えて、バーベキューに合う日本酒を作ろうと考えたのです」と語る。

 ただ戸田市内には蔵元がない。知り合いの蔵元「釜屋」(埼玉県加須市)の協力で、参加者が酒造りを体験し、日本酒を作る取り組みが本格化した。17年3月に、太陽の下で楽しむ日本酒「かけはし」が完成。甘さを抑えた微発泡で、どんな料理にも合うスッキリとした味わいの酒だ。

酒造りを体験し、日本酒を作る取り組みが本格化
酒造りを体験し、日本酒を作る取り組みが本格化

戸田をバーベキューの“聖地”に

 戸田市には、バーベキューが楽しめる公園が複数ある。中でも荒川に接する彩湖沿いに整備された「彩湖・道満グリーンパーク」は特に人気が高い。鈴木さんは「バーベキューと日本酒」で戸田の強みを発信する拠点を同公園に定め、SNSで参加者を募り、17年4月30日にバーベキューを開催。約20人が集まった。

甘さを抑えた微発泡の日本酒「かけはし」
甘さを抑えた微発泡の日本酒「かけはし」

 これまで5回開催し、料理のレベルも上がってきた。料金は大人1人4000円(小学生以下無料)。食材もできるだけ埼玉県産にこだわり、県北部深谷市の「むさし麦豚」のソーセージが人気を集めている。

 「参加者の皆さんの反応に手応えがあります。バーベキュー好きな人たちを日本酒『かけはし』で笑顔にし、戸田をバーベキューの“聖地”にしたい。花見の時期など季節に合わせたバーベキューを企画していきたいです」

バーベキューの参加者たち
バーベキューの参加者たち

   ◇   ◇

 地域の活性化を目指す数多くの取り組みが各地で行われています。成功する事例では、どんな人が何をしているのでしょうか。全国で専門店や飲食店のブランドづくりを指導するコンサルタントの櫻田弘文さんが、具体的な取り組みと成功のポイントを探ります。

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櫻田弘文

櫻田弘文

クエストリー代表取締役

1955年山梨県生まれ。日本大学卒業後、78年に販売促進の企画・制作会社に入社。2001年、クエストリーを設立して独立。中小企業経営者向けの「クエストリー・ブランディングクラブ」を主宰する他、数多くの専門店や飲食店のブランディングを実践的に指導している。

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