藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

サラエボからモンテネグロへ 断崖の山地を越えて行く

藻谷浩介・地域エコノミスト
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国境を越えていく道は険しかった。トンネルを抜け向こうに見える橋を渡る。(写真は筆者撮影)
国境を越えていく道は険しかった。トンネルを抜け向こうに見える橋を渡る。(写真は筆者撮影)

 「六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字を持つ、一つの国家」と称しながら、1990年代初頭に解体した旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国。その中でもとりわけ辺境にあたり、相互の交通も乏しいボスニア・ヘルツェゴビナとモンテネグロの国境をミニバスで越える。凄惨(せいさん)なまでに険しい地形と、この地域の歴史との、切り離せない関係とは?

 前日の「ザグレブ→サラエボ」の移動では、予定の飛行機が飛ばずに大幅なタイムロスを余儀なくされた。だが今日の、モンテネグロ共和国の事実上の首都ポドゴリツァへの移動では、そのような心配はない(憲法上の首都はツェティニェ)。同じ旧ユーゴで隣り合う両国の首都同士だが、航空便は最初から飛んでいないからだ。もちろん鉄道もなく、公共交通はワゴン車に毛が生えたようなミニバスが1日数本のみとなる。所要6時間半。途中には何があるのだろうか? それとも何もないのか?

 モンテネグロは、オスマントルコが東欧を席巻した500年間あまり、大海の中の孤島のようにキリスト教の正教を奉じて独立を保っていたという、武勇の誉れ高い国だ。サラエボからは南東方向にあたり、バスは「東バスターミナル」から出る。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。