藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

欧州の僻地モンテネグロで触れた「女性たちの思い」

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ポドゴリツァの書店の元気な女性スタッフと男性客。顔はスラブ人というよりイタリア人(写真は筆者撮影)
ポドゴリツァの書店の元気な女性スタッフと男性客。顔はスラブ人というよりイタリア人(写真は筆者撮影)

 「六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字を持つ、一つの国家」と称しながら、1990年代初頭に解体した旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国。そこから独立した中でも最小のモンテネグロ共和国の首都ポドゴリツァに着く。欧州各国の首都の中でも屈指に無名だと思われるポドゴリツァを歩き、常に忘れ去られ続けてきたこの地に根差す人々の心に、思いを巡らせる。

 6時間半のミニバス乗車の末、定時の15時半に着いたポドゴリツァのバスターミナル。人口70万人と佐賀県ほどの大きさの国の、佐賀市ほどの大きさの首都だ。と言ってしまうと佐賀市に失礼で、こちらにはスターバックスコーヒーもマクドナルドもない。ショッピングセンターもコンビニも、飲み屋街もライブハウスもない。でも欧州には珍しい、日本でもなかなか見かけないほど水晶色に澄んだ川が、小さな市街地の真ん中をとうとうと流れ下っていた。

 バスターミナルの横にある駅をのぞくと、ちょうど1日に何本もない列車が、アドリア海沿いのリゾートエリアから何時間かかけて着いたところだった。思いのほか大勢の乗客が降りて来る。この列車はこれから、セルビアのベオグラードに向けて、筆者が今まで抜けて来たのと方向は違うが、同じようにとんでもなく険しい山地を越えて行くはずだ。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。