藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

ドナウ川の要衝ベオグラードに残る戦争の傷痕と憂鬱

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ユーゴスラビア解体の紛争当時、NATOのミサイル攻撃で破壊された政府のビルがそのまま残されていた(写真は筆者撮影)
ユーゴスラビア解体の紛争当時、NATOのミサイル攻撃で破壊された政府のビルがそのまま残されていた(写真は筆者撮影)

 「六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字を持つ、一つの国家」と称しながら、1990年代初頭に解体した旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国。その中心だったセルビア共和国の首都ベオグラードは、ここを押さえればバルカンを制するともいえるドナウ河畔の要地だった。有史以来限りない数の争奪戦の繰り返されたこの場所に、この地を守り続けたセルビア人の矜持(きょうじ)と尽きぬ悲しみを見る。

 旧ユーゴ旅行も4日目。今日はモンテネグロの首都ポドゴリツァからセルビアの首都ベオグラードに飛んで(北上)、市内を見てからまたマケドニアの首都スコピエに飛び(南下)、さらにバスでコソボの首都プリシュティナに向かう(再北上)という、今回旅程でも最もむちゃな移動日だ。慌ただしいが、知られざる国から、さらに知られざる国、えたいの知れない国へと、どんどん深入りしていく冒険気分は、悪くはない。

 日本でいえば北海道・女満別空港に小さな免税品コーナーがついたような感じのポドゴリツァ空港から、2×2列の小型機で40分。バルカン半島の旧東欧諸国ではルーマニアの首都ブカレストと並ぶ都会、ベオグラードにやってきた。セルビアの人口700万人のざっと3割が住んでいる。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。